研究概要 |
平成14年度は,同一敷地内における中低層建築物群について,建築物配置及びそれらの密度を変化させた市街地モデルを16パターン設定し,それらを対象とした日照・採光環境評価シミュレーションを行った。それら結果データを基に,指標値の分布形状や数値変化について各タイプに共通して見られる特徴や傾向の把握を行った。 市街地モデルの規模は,街区面積1,470m^2,外周道路幅6m,許容容積率・建ぺい率はそれぞれ200%・60%とした。敷地割りのパターンは個別・連担・共同の3種である。太陽からの日射エネルギー及び光の受照面は,建築物周辺の地表面と壁面を対象とした。算出した指標値は,晴天時の日射環境を示すSER(日射エネルギー比)とSTR(日照時間比),曇天時の採光環境を示すIR(照度比),SF(天空率)の4指標である。 結果,地表面において全モデルに共通でみられた特徴として,IRとSFの相違を示すグラフは,測定位置に拘わらず,常にIR>SFであり,その差は10%以内でほぼ一定であることが分かった。このことから,測定した天空率の結果に10%以内での補正値を乗じることによって,天空率から市街地の照度を推測することが可能であることを確認した。次に晴天時の日照環境を表すSERとSTRについて,両指標値の差は,街区周辺の街路・建物間空地共に南北方向ではほぼ一定であるのに対し,東西方向では交差点部分と,建物に挟まれた部分での差が大きいことが分かった。これら結果は,STRからSERの推測へと繋げる判断材料のひとつと考えることができる。 研究は当初計画通り順調に進捗しており,一部次年度以降に予定していた内容を含む作業を進めている。今後は本年度に得られた配置タイプ毎の数値・分布形状の特徴を基に,タイプ間での比較を行い,良好な日照・採光環境が得ることができ,且つ,景観形成に配慮した配置タイプについて明らかにしていく。
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