研究概要 |
1 病原細菌の獲得と媒介の経時的変化 カンキツグリーニング病の虫媒機構を研究する為の伝搬実験系の構築を行った。本実験系では、先ず本病を保毒させる為に罹病樹葉を吸汁させる。その後に健全樹に本病を伝搬させる為の吸汁行うという、2つの吸汁のステップからなる。この際、保毒虫を隔離し逃避を防ぎ、安全に効率良く実験を行うシステムが確立された。本実験系を用いて、幼虫及び成虫キジラミに罹病樹葉を一定時間吸汁させ、保毒率を解析した。その結果、幼虫は6時間吸汁では40%の保毒虫率が24時間吸汁により100%(2回反復)にまで高まることが判明した。また、成虫は48時間吸汁により保毒虫が80-100%(3回反復)となり、幼虫、成虫ともに高率に本病を保毒することが明らかとなった。更に、本病の伝搬様式を明らかにする為、幼虫期または成虫期に保毒した個体による伝搬実験を行った。その結果、成虫期に保毒した個体群は本病を長期間虫体内に保毒維持出来るが、健全樹に本病を伝搬をしなかった。一方、幼虫期に保毒した個体群は、羽化成虫になるまでに本病を伝搬し、羽化後の成虫も長期間に渡って本病を保毒維持することが明らかとなり、発育ステージに依存した伝搬様式を示すことが示唆された。今後は、発育期と伝搬能との関係を詳細に検討する。 2 ミカンキジラミ体内の共生細菌相とグリーニング病細菌の局在 共生細菌相と本病細菌の局在性の差異を検討するため、in situ hybridization(ISH)法による検出を試みた。各種組織切片作成法を試みた結果、パラフィン切片法により組織形態の保たれた切片が得られた。また、ISH法を確立し、本法により虫体内の共生細菌が検出された。既報の局在部位とも一致したことにより、奄美大島由来ミカンキジラミ個体群(果樹研究所所有)は他のアジア地域に生息するミカンキジラミと同様な共生細菌相を有することが示唆された。また、初年度は沖縄本島由来のミカンキジラミを、沖縄県農業試験場害虫研究室の協力により採集(現地にて化学固定し果樹研究所へ移送)することが出来た。今後は、共生細菌相のミカンキジラミ地域個体群間差の分析を進めると共に,本病の伝搬様式と局在性との関係、更には共生細菌相との関連を詳細に検討していく。
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