本研究はアルツハイマー病における、アストロサイト、ミクログリアなどの非神経細胞の関連と機能を明らかにすることを目的としている。脳内にアミロイドペプチドを持続的に投与し、アミロイドペプチドのアストロサイト、ミクログリアへの吸収を観察したところ、アミロイドペプチドはアストロサイトに顕著な吸収が観察されたが、ミクログリアには吸収が見られなかった。一方、アストロサイトに吸収されたアミロイドペプチドには、投与中断後一ヶ月放置したが、消化/分解等の形跡は観察されなかった。よって、アストロサイトの機能は増加したアミロイドペプチドの貯留であると考えられ、少なくとも一ヶ月程度の短期間ではアミロイドペプチドを分解できないものと考えられた。 アストロサイトでも合成される神経栄養因子の一つ、脳由来神経栄養因子(BDNF)はアルツハイマー病との関連が指摘されており、アストロサイトはBDNFを通じてアルツハイマーの病態に影響するとも考えられるので、BDNFを脳内に投与する実験を行い、ノルアドレナリン系神経に対する影響を調べた。 また、若年ラットと老齢ラット脳を用いて、アストロサイトのアミロイド吸収の比較を試みた。しかし、老齢ラットではアストロサイトの形状が肥大、もしくは数が増加する傾向が観察されたので、アストロサイトの性状が加齢により変化している可能性が考えられ、一概に比較することが出来なかった。このことに関しては、青斑核由来のノルアドレナリン性神経系を破壊するとアストロサイトの活性化が亢進するとの報告があり、アストロサイトの加齢による変化はノルアドレリン性神経系との関連が考えられたので、ノルアドレナリン性神経系の加齢変化も調べた。 なお、アストロサイトの活性化阻害に関しては、グリア線維酸性蛋白のアンチセンスmRNAを投与する実験を行ったが、明確な阻害効果を得ることができなかった。
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