研究概要 |
植物細胞においてリボザイム挙現系を構築したが,遺伝子発現抑制効果が得られなかった。哺乳動物細胞は37℃で培養するが,植物細胞は27℃で培養するため,反応速度が極めて遅くなることが原因であると考えられる。そこで,遺伝子発現を制御する方法として長い二重鎖RNA発現ベクターを用いたRNAi法を検討したところ,効果的にタバコ培養細胞における遺伝子発現が抑制され,Methods Mol. Biol.誌にその方法を発表した。 哺乳動物細胞においてRNAiを用いたストレス耐性に関与する遺伝子の研究も同時に進めている。RNAiは非常に強力な遺伝子発現制御法として注目されている技術であるが,30塩基以上の長い二重鎖RNA(dsRNA)は細胞にストレスを与え,インターフェロン(IFN)応答に関わる遺伝子を誘導することが問題となっている。長いdsRNAによるRNAiは,例えば変異の入りやすいRNAウイルスなどに対して有効であると考えられる。 特定の条件でdsRNAに変異を入れると,100塩基以上のdsRNAでもIFN応答を誘導せず,RNAi活性を全く落とさないことが分かった。この現象は,ヒト癌細胞だけでなく正常マウス細胞においても観察され,一般性が示された。実際にC型肝炎ウイルス(HCV)配列を標的として長いdsRNAベクターを導入すると,21塩基のsiRNAでは抑制できないような変異が入ったウイルスに対しても効果があることが示唆され,さらに21塩基のslRNA発現ベクターよりも早い時間でHCV増殖の抑制が観察された。 これらの結果は,哺乳動物細胞で長いdsRNAを用いた場合にIFN応答を避けられる方法を示した初めての報告であり,その応用としてRNAウイルスに対する有効性をも示した。その結果をまとめた論文は,Mol. BloSystems誌に発表した。
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