1.in vitro転写/翻訳系を用いて、TMXのN末端領域がシグナルペプチドとして認識・切断されるかどうか検討した。イヌ脾臓由来ミクロソームメンブレン(CMM)を反応液に加えることにより、シグナルペプチドの切断や膜通過、糖鎖結合などのプロセシングを再現できる。CMM非存在下では、TMXはシグナルペプチドのついた前駆体型として合成された。CMMを添加することにより、分子量の小さい成熟型も同時に検出されたことから、TMXのN末端領域はシグナルペプチドとして機能し膜透過後に切断されることが示唆された。 2.TMXの膜への結合様式を調べるため、アルカリ溶液、および界面活性剤を用いて膜からの抽出を試みた。アルカリ処理により膜は断片化し、表在性膜タンパク質や内腔のタンパク質は可溶化されるのに対し、内在性膜タンパク質は抽出されない。小胞体内腔に存在するPDIが、アルカリ処理によって可溶化されたのに対し、TMXは膜から抽出されず不溶性の沈澱として回収された。界面活性剤の存在下では可溶化され上清に回収されたことから、TMXは内在性膜タンパク質であり、膜貫通ドメインと予想される疎水性領域を介して膜に強く結合していると考えられた。 3.TMXの膜上でのトポロジーを、プロテアーゼによるタンパク質の切断パターンから決定した。プロテアーゼ処理により、膜の外側に露出した部分は切断されるが、内腔側の部分は保護されるので、分子量の小さくなったペプチド断片が検出される。293細胞より調製した膜画分をトリプシン処理後TMXのN末端領域に対する抗体を用いてウエスタンブロットを行った。トリプシン処理により約20kDaのバンドが新たに検出された。この保護された領域は、抗体が認識可能なTMXのN末端側に相当すると考えられ、TMXはチオレドキシンドメインを含むN末端側が小胞体の内腔に存在し、C末端側が細胞質側に向く、いわゆるI型膜タンパク質であると予想された。
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