平成16年度においては主に道東沖から薩南海域にかけて出現するハダカエソ科の仔稚魚に関する研究を行った。特にこれまで仔魚期の形態や出現場所が全く不明であったヤセハダカエソについてのその詳細を明らかにした。その結果、小型仔魚は冬期の黒潮域に出現し、稚魚期になると春の移行域に達することが明らかとなった。本種の、成魚の主分布域は北西太平洋において親潮の影響をうける亜寒帯域であることから、黒潮域に産卵回遊を行っている可能性が示唆された。同時に、これまで本種の新参シノニムとされていたニュージーランド産のSlemonosudis molestaについてタイプを含む標本を精査したところ、脊椎骨数や側線上の鱗の形態が明らかに異なり、両タイプは別種であると判断した。これらの仔稚魚期に関する結果と、カリフォルニア産の標本との比較を検討しており、今後、まとめて投稿する予定である。また本年度の調査で親潮域の中深層に最も多く出現するハダカエソ科魚類はヤセハダカエソであった。これらの出現種の組成についての調査を行ったところ、9月の調査航海において、クロナメハダカ属の一種、Lestidiops ringensの標本、1個体を得ることが出来た。本種は、吻部が短いこと、臀鰭条数が少ないこと、発光腺を持たないことなどで、ほかのハダカエソ科魚類から識別できる。これまで北東太平洋を主分布域とし、西部では千島列島沖で僅かに報告があるだけであった。この標本の出現は日本近海で明確な標本に基づく初あての記録であり、日本産初記録種として新称を与える論文を作成中である。
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