平成17年度においては、道東沖から東北沖にかけての親潮域、および移行域の調査海域から得られたハダカエソ科魚類の分類学的研究とチゴダラ科魚類2種の稚魚に関する研究を中心に行った。ハダカエソ科魚類の分類学的研究については、日本初記録種となるLestidiops ringensを移行域から採集し、魚類学雑誌において新和名キタナメハダカを与えて記載した。また、ヤセハダカエソの分類学的再検討により、本種の分布域は北太平洋に限られていることが明らかとなった。現在これらの結果は、本種の仔稚魚の形態と分布特性に関する結果と併せて、投稿中である。チゴダラ科魚類の稚魚については、1989年のサンマの移行域調査から採集された標本であり、改めて種の査定と形態的特徴を精査した。その結果、カナダダラとチゴダラの2種であることが判明した。この2種はともに初期生活史に関する知見が乏しく、稚魚期の標本はこれが初めての報告になる。カナダダラは成魚の吻端が極めて突出しているという特徴を持っているが、稚魚期では吻は丸くなっていた。おそらく体長10センチ未満のサイズから吻部の発達がはじまると推測された。チゴダラに関しては、下顎のひげと腹部の発光器が顕著で、腹鰭が糸状に長く伸長するなどの特徴を有していた。これら2種の稚魚に関しては、外部形態と内部骨格系の形態を含めて、論文を作成中である。
|