修士課程において検出したヒトCD19遺伝子の3'非翻訳領域繰り返し多型のうち疾患感受性アリルを持つB細胞におけるCD19発現量の解析とともにCD19とSLEを含む免疫異常との関連を確立するために強皮症における関連研究を行った。また、別の疾患感受性候補遺伝子としてヒトLIR遺伝子ファミリーに注目し、系統的な多型解析、関連研究を行った。 1.日本人対照健常者11人、全身性エリテマトーデス(SLE)患者15人をSLEとの関連が検出されたヒトCD19遺伝子の3'非翻訳領域繰り返し多型c.*132(GT)_<15.18>アリル陽性群と陰性群に分け、末梢血から単離したB細胞におけるCD19mRNAレベルを定量的RT-PCRにより比較した。同様に日本人対照健常者15人、SLE患者7人を用いてCD19陽性B細胞におけるCD19タンパクレベルを定量的フローサイトメトリーにより比較した。その結果、得られるCD19 c.*132(GT)_<15.18>アリル陽性の検体数が少ないために有意差には達しなかったが、c.*132(GT)_<15.18>アリル陽性群におけるCD19発現低下の傾向が認められた。 2.すでにCD19発現増強が報告されている強皮症を対象としたCD19多型の関連研究を行った。その結果、CD19遺伝子の3'非翻訳領域繰り返し多型とともにプロモーター多型-499G>Tとの関連が検出されたが、対照群と疾患群の出身地に地域差が認められたため、さらなる検討が必要であると考えられる。 3.新たな関節リウマチ(RA)、SLEの疾患感受性候補遺伝子としてLIRファミリー遺伝子に注目し、そのうちLIR1の多型解析、関連研究を行った。日本人健常群18サンプルを用いて全遺伝子領域領域のダイレクトシークエンスを行った結果、非同義置換5箇所を含む17箇所の多型を検出した。そのうち、プロモーター領域から細胞外までの12箇所の多型は日本人31家系を用いた解析により主に3つのハプロタイプに分かれることが分かった。このうちひとつのディプロタイプ(LIR1.01/.01)が確立されたRA疾患感受性因子であるHLA-DRB1 shared epitope(SE)を持つかどうかで層別化して解析を行った結果、SE陰性群同士の比較においてRA患者で有意に増加していた(P=0.037)。SLEとの関連は認められなかった。
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