昨年度は、アミノ酸配列のアライメント法の改良を行った。改良したアライメント法の精度を評価したところ、既存の方法と比べて、アミノ酸配列の一致度が低い場合(30%未満)に、より正確なアライメントを得られることがわかった。本年度は、この改良したアライメント法をホモロジーモデリング法と組み合わせることで、タンパク質の機能部位の予測を行った。具体的には、らん藻の概日時計の中心的役割を果たしているKaiCに適用した。KaiCは、ATP依存的に6量体を形成し、自己リン酸化することがこれまでに明らかとなっている。6量体形成および自己リン酸化は、概日時計の振動に重要であると考えられているが、リン酸化されるアミノ酸残基およびリン酸化のメカニズムは明らかとなっておらず、またKaiCの立体構造も決定されていない。そこでKaiCのリン酸化部位を予測する為に、KaiCとアミノ酸配列の類似性があるDNAヘリカーゼの立体構造を基にして、KaiCの6量体構造をホモロジーモデリング法によって構築した。KaiCとDNAヘリカーゼのアミノ酸配列の一致度は30%を下回っている為、改良したアライメント法を用いることで、既存の方法よりも精度よいアライメントが得られることが期待された。構築したKaiCの6量体構造に基づき、リン酸化部位の予測を行った。名古屋大学の近藤孝男グループらが実験によって自己リン酸化部位を同定したところ、予測したアミノ酸残基が確かにリン酸化されることが明らかとなった。同定されたリン酸化部位は、6量体構造のサブユニット接触部位に存在しており、自己リン酸化が起こる為には6量体が形成される必要があること、および隣のサブユニットが結合するATPの加水分解によってリン酸基が転移されることがはじめて示唆された。
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