研究概要 |
【目的】造血幹細胞の制御機構としてWnt,HoxB4とともに、哺乳類ポリコーム遺伝子群の関与が報告されてきている。我々も、ポリコーム遺伝子群mel-18が造血幹細胞の自己複製に負の制御をしている結果を示してきた。つまり造血幹細胞中mel-18の発現が増加すると分化し、発現が低下したままであれば自己複製へ運命付けられる。今回、このメカニズムの研究過程で、造血幹細胞の自己複製に関わるHoxb4とmel-18の相互関係を示唆する結果を見いだした。 【方法】マウスはmel-18+/+およびmel-18-/-を用い、骨髄中lineage-c-Kit+Sca1+flk2-細胞をsortingし、Hox遺伝子群の発現を解析した。また骨髄細胞でCRU assayを行い、in vivoでの検討をした。一方でこれらの細胞をmethylcellulose colony assay法でin vitroでの検討した。さらに正常C57BL/6マウスの骨髄細胞をex vivoでantisense-oligoを暴露した時の自己複製能を評価した。 【結果・考察】造血幹細胞のmel-18発現の低下により、Hoxb4発現が増加することで造血幹細胞の自己複製が亢進することが判明した。正常骨髄細胞をex vivoでantisense-oligoを暴露した時も同様にHoxb4発現が増加し、結果として自己複製が亢進し、5倍以上の造血幹細胞ex vivo expansionが成功した。近年、哺乳類ポリコーム遺伝子群でありながら、rae28やbmi-1はmel-18と対照的に造血幹細胞の自己複製に正の制御をしている可能性が報告された。ポリコーム遺伝子群の中でも、遺伝子によって機能(標的遺伝子?)が異なる可能性、ポリコーム遺伝子群と造血幹細胞の自己複製制御を示唆する結果であった。
|