研究概要 |
植物の生産性を高めるためには、地上部諸形質の改良のみならず、土壌資源の効率的な獲得を目指した根系構造の改良が極めて重要である。そこで本年度は,イネの根系形成機構を明らかにすることを目的に,イネ短根型変異体(rt),および冠根欠損型変異体(crl1)の原因遺伝子の単離を試み,以下の点を明らかにした. まず,それぞれの変異体にKasalathを交雑した大規模F_2雑種集団を用いて詳細な連鎖地図を作製した結果,rt遺伝子は第4染色体約77cMの分子マーカーC335とR2226に挟まれた0.3cMの領域に,またcrl1遺伝子は第3染色体約13cMの分子マーカーC725とR3131に挟まれた1.1cMの領域に座乗していることを明らかにした。 次に,RT遺伝子が座乗するPACクローン(P429B10)を同定後、イネゲノム研究チームの協力を得て塩基配列を解読し、座乗候補領域のORFを予想したところ、Arabidopsisのcell wall assemblyに関与するKOR(KORRIGAN)遺伝子に高い相同性を有する遺伝子が見いだされた。そこで,この遺伝子について野生型とrt変異体の塩基配列を比較したところ塩基の変異が見いだされた。 同様にCRL1遺伝子が座乗するBACクローン(b0050N02)を同定後,その情報より新たに分子マーカーを設定し詳細な連鎖解析を行った結果、CRL1遺伝子は分子マーカー50kACと56kACに挟まれる約6kbに座乗していることが明らかとなった。この領域における遺伝子を予測したところ2個のORFが予想され,crl1においてこの候補領域の全塩基配列の決定を行ったところ、ArabidopsisのLOB(LATERAL ORGAN BOUNDARIES)遺伝子に高い相同性を有する遺伝子内に塩基置換が見いだされた。
|