研究分担者 |
岩上 直幹 東京大学, 理学部, 助教授 (30143374)
藤原 玄夫 福岡大学, 理学部, 教授 (80037217)
岩坂 泰信 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (20022709)
中澤 高清 東北大学, 理学部, 助教授 (30108451)
富永 健 東京大学, 理学部, 教授 (50011531)
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研究概要 |
大気中の二酸化炭素等の温室効果ガスやオゾンとその前駆気体の将来予測を行うためには、地球表層におけるこれらの気体成分の循環の実態とメカニズムを明らかにする必要がある。そのためには、関連気体成分の時間的・空間的変動の実態を詳細に把握することが不可欠である。また、地球規模の物質輸送や大気中での不均質化学反応のメカニズムを解明するために、対流圏および成層圏のエアロゾルについても、それらの時空間分布や物理化学的性質を明らかにする必要がある。この観点から平成2年度には、次の諸研究を実施した。 (1)民間旅客機および小型チャ-タ-機を用いた日本上空対流圏各層(30〜10,000m)でのグラブサンプリングによるCO_2,CH_4およびそれらの安定炭素同位体比の観測 (2)日本ーオ-ストラリア、日本ー北アメリカ間におけるコンテナ船上におけるグラブサンプリングによるCO_2,CH_4およびそれらの安定炭素同位体比の観測 (3)南極観測船しらせによる日本ー南極間の大気および海水中のCO_2分圧の連続観測 (4)昭和基地におけるCO_2およびCH_4濃度の連続およびグラブサンプリングによる観測 (5)大気球を用いたクライオジェニックサンプリングによる成層圏の温室効果ガスおよびフロンの観測 これらの観測によって得られたデ-タは、CO_2,CH_4,CFCs等の放出・吸収源の定量的決定にきわめて有効なものである。 また、オゾンホ-ルとの関連で注目されている成層圏エアロゾルに関する一連の予備観測・調査を実施した。 まず、スェ-デンにおいて気球観測を実施し、その結果、北極圏においても南極同様、冬から春にかけて硝酸を含んだエアロゾルが形成されそれによって成層圏の脱窒が進行して、塩素酸化物によるオゾン破壊が進む可能性のあることが示唆された。アラスカのポ-カ-フラットで予備調査を実施し、アラスカ大学との共同で成層圏オゾンと成層圏エアロゾルの気球観測、地上分光観測によるNOx観測、ライダ-による成層圏エアロゾル観測を実施する方針が決定された。さらに、ノルウェ-においても予備調査を実施し、スピッツベルゲン島で大気環境観測を実施できる見通しが立った。 さらに、アジア大陸から西太平洋への物質輸送という観点から、黄砂をはじめとする大陸起源のエアロゾルの輸送について観測・解析を実施し、西太平洋域における対流圏エアロゾルの挙動のみならず、より一般的な物質輸送に関して、多くの貴重な知見を得た。これらを要約すると、平成2年度においては、新プログラムの初年度として、予定の研究が順調に進捗したと言うことができる。
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