研究課題/領域番号 |
03041012
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中尾 欣四郎 北海道大学, 理学部, 教授 (40000830)
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研究分担者 |
MENGA kuluki ザイール自然科学研究所, ウビラセンター, センター長
NDONTONI Zan ザイール自然科学研究所, 所長
冨永 裕之 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助手 (10022625)
知北 和久 北海道大学, 理学部, 講師 (70142685)
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キーワード | 深水層 / メロミクティック構造 / 溶存二酸化炭素 / 溶存メタン / 安定成層 / 熱帯湖 / 熱塩対流 / リフトバレ- |
研究概要 |
世界有数の深湖であるアフリカ・リフトバレ-のキブ湖、タンガニ-カ湖を選び、深水層の安定に対する熱エネルギ-や溶存物質の移流、拡散効果を明らかにするため、1991年に、キブ湖の本調査を実施した。 ギブ湖は中央アフリカ、南緯2度、東経29度の赤道地帯に位置する熱帯湖である。湖は元来、北流してナイル川の支川を成す河川流域であったが、約1万年前、湖北に降起した火山群により塞止められた。湛水した閉塞湖は南側の分水界を切って逆に南へ流出し、150km下流のタンガニ-カ湖を経て、ザイ-ル川の支川となった。 湖面積は2,400km^2、湖を含む流域面積は7,300km^2で、最大水深485m、平均水深240m、窪度は0.88%、肢節量は3.6で、沈水性の湖盆形状を示している。 キブ湖畔の年平均気温は20.4℃、月平均気温の年平均偏差は0.6℃で、年較差の小さい熱帯性気候の特徴を示す。湖表水層の深度は60〜90mで22.9℃に低下した水温は、深度増加に伴い湖底までゆるやかに上昇し、450m深で26.6℃に達する、また、表水層下の深水層水温の経年変動は認められず、極めて安定したメロミクティック水温構造を示している。この原因は、湖底から発生する二酸化炭素(CO_2)とメタン(CH_4)の溶存ガス、K、Na、CO_3などによる密度増加にある。なお、溶存ガスの含有比はCO_2が74%、CH_4が18%であった。また、400m水深のCO_2溶存度は飽和溶存量の7〜8%に過ぎず、100m以浅まで水塊が上昇したとき始めて発泡する。また、これまでの調査から深水層のCO_2、CH_4溶存量は火山活動の変化にかかわらず、極めて低い未飽和状態で推移しており、ニオス湖に見られた連鎖反応的なガス突出応的なガス突出災害が生じる可能性は皆無である。これは深水層の水温分布の階段構造に見られる如く、活発な熱塩対流がCO_2の供給変動を解消し、深水層におけるガス溶存量を安定に維持していると思われる。ただ、キブ湖周辺諸国が希求しているエネルギ-源としてのメタン採取は、CO_2ガス突出の引金となる可能性があり、重大災害につながる危険性が極めて高いこと強調しておきたい。
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