研究概要 |
本研究は北米・中米の野外調査によってキク科ヒヨドリバナ連の代表的な属の材料を収集し,DNA系統学的分析に供することを目的として行なわれた。染色体数が多いことからヒヨドリバナ連の中で祖先的な群と考えられるNeomirandia属,Ageratina属,Mikania属を入手することに主たる目的があった。これらの材料をコスタリカで採集し,液体窒素で保存した後ドライアイスで氷冷した合衆国に運び,DNA資料を抽出した。これらのDNA資料にもとづいて,葉緑体DNAプロ-ブを用いて制限酵素切断断片長多型を調べた。これまでに40箇所の系統学的に意味を持つ制限サイト多型を見出した。これらのサイト多型を用いて系統樹を推定した結果,n=17の2属(Neomirandia属をAgeratina属)のクレ-ドが先ず分岐し,次にn=16〜19のMikania属が分岐し,続いてn=9〜11を持つ9属からなるクレ-ドが分岐した。この結果はn=17を持つ状態が祖先的であり,ヒヨドリバナ連に一般的なn=10という染色体数が派生的であるという当初の予測を支持する。比較の対照としてメナモシ連のClibadium属,ハルシャギク連のCoreopsis属について制限サイト多型を調査した。この結果Coreopsis属から先ずCibadium属が分岐し,次にヒヨドリバナ連が分岐するというトポロジ-が得られた。Clibadium属の染色体数はn=16であり,上記のヒヨドリバナ連についての結果から考えられる染色体数の減少を支持する。今後はメナモシ連の中の系統関係を明らかにすることによって,メナモシ連の系統発生の過程で倍数体系列による染色体数の増加があり、その後染色体数の減少が起きたことを示したい。
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