研究課題/領域番号 |
03041041
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
岩松 鷹司 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90023994)
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研究分担者 |
NONTJI Anuge インドネシア科学院, 陸水学研究開発センター, 所長
SOERTO Bambo サムアトランギ大学, 水産学部, 講師
沖野 外輝夫 信州大学, 理学部, 教授 (50020681)
宇和 紘 信州大学, 理学部, 教授 (20020662)
成瀬 清 東京大学, 理学部, 助手 (50208089)
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研究期間 (年度) |
1991
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キーワード | メダカ亜目 / アドリアニクチッド / ポソ湖 / スラウェシ島 / 陸水学的調査 / Oryzias / Adrianichthys / Xenopoecilus |
研究概要 |
メダカ属(Oryzias)とその類縁の魚から成るメダカ亜目魚類(Adrianichthyoidei)は、アジア固有の淡水魚である。このうち、染色体融合型グル-プのメダカ属魚類と、これに近縁なアドリアニクチス類(Adryanichthys & Xenopoecilus)が生息しているスラウェシ島は、アジアとオ-ストラリアの生物の地理的分布の移行帯であるウォラセアに属しており、メダカ属の系統、種分化と地理的分布の関係を調べるうえで非常に重要な地域である。スラヴェシ島の調査により、メダカ亜目魚類全体の系統が明らかになると基待される。しかし、最近の報告によると、これらの固有種は湖にコイやティラピアのような食用魚を導入したためほとんど見掛けることができなくなり、絶滅したのではないかと心配されている(Whitton et al.,1988;Kottelat,1990)。 本研究では、スラウェシ島中部のポソ湖に於て、これらの魚魚を採集し系統と種分化に関する研究を行うと共に、生息地の環境と魚の生息状況の調査を行い、魚の保護につて将来的な方策をたてることを目的とした。 ポソ湖は、セレベス島中部の海抜500mの所にある構造湖で、最大面積は323km^2である。最大水深は450m、南北に長い長方形状の形をしている。湖の北東部のテンテナに開口部があり、湖水は全長57kmのポソ河に流出している。 今回の陸水学的調査で、ポソ湖は透明度約10mの典型的な貧栄養湖であることが明らかになった。表水のは8.45、導伝率は118/cmで、硝酸・亜硝酸態窒素や燐酸はほとんど含まれていない。湖の一次生産の指標であるクロロフィルa量は0.99mg/Lで、植物および動物プランクトンの優先種はツヅミモ類(Staurastrum limeticum)とコッペポ-ダ類(Thermocyclops uenui)であった。従って、ポソ湖に生息できる魚の種類と量は非常に制限されると考えられ、外から魚が導入されれば在来との間で激しい競争が生じると思われる。 ポソ湖でこれまでに報告されているメダカ亜目魚類は、メダカ属2種(O.nigrimasとO.rthognathus)、ゼノポエキルス属2種(X.oophorus)、アドリアニクチス属1種(A.kruyti)、の合計5種である(Kottelat,1990)。このうち、メダカ属2種とX.oophorusは、湖の流出口のテンテナとその周辺で採集できた。また、X.poptaeは、1991年4月にテンテナの橋の下流で釣り上げ、フォルマリンで固定した標本(成魚雌:SL154mm)を確認・観察することができた。しかし、A.kruytiについては、生息が全く確認できなかった。X.poptaeとA.kruytiの2種はポソ湖西岸の水深20ー30mの所に生息していると言われており、沿岸帯の水面近くに生息している他の3種とは違った採集方法を行う必要があると思われる。 スラウェシ島の淡水漁業は、もともと有用な在来魚が少なかったため、コイ、ティラピア、バルブ、グラミ-、ナマズ等の導入魚に基盤を置いている。ポソ湖には6種の在来種が生息しているが、そのうち重要な魚種はウナギ(Anguilla mauritiana)だけであった。ポソ湖に導入された魚種は、コイCyprinus carpio、ティラピアTilapia sp.、グラミ-Trichogaster trichopterus、ナマズ(Clarias sp.等であるが、導入された時期は不明である。このうち、特にティラピアは水深10ー30mに生息し、同じ水深に生息するA.kruytiやX.poptaeと生息場所や餌が競合すると思われる。加えてティラピアは繁殖力が強いので、ポソ湖の様な貧栄養湖では、A.kruytiやX.poptaeの生存は極めて危機的な状態になると思われる。 今回の調査では、メダカ属2種とX.oophorusは生存が確認できたが、A.kruytiとX.poptaeは生存を確認することができなかった。これら2種が危機的な状態になっている可能性が高い。生否の確認や生息状態の調査には魚探知機の使用や、20ー30mの深さでの網や釣を使った捕獲を計画する必要があろう。
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