東アフリカにおける人類と現生類人猿の起源に関する研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03041045
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 石田 英実 京都大学, 理学部, 教授 (60027480)
• 研究分担者: ミーブ リーキー ケニア国立博物館, 古生物学研究部門, 部長 ; 国松 豊 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (80243111) ; 中野 良彦 大阪大学, 人間科学部, 助手 (50217808) ; 石田 志朗 山口大学, 理学部, 教授 (40025268)
• キーワード: 人類の起源 / ヒト科 / 地質・化石調査 / 中新世 / ヒト上科 / アフリカ / 古環境 / 古人類学

研究概要

平成4年度に実施した調査は、フィールドとらボラトリーの2つに大別できる。前者は北ケニアのサンブル=ヒルズとナチョラ地域における地質構造の調査および岩石標本と動・植物化石の採集、発掘であり、後者は主としてケニア国立博物館おいての化石標本の整理、形態の観察、記載と計測、形態比較による系統分析、精密模型標本の作成、比較資料の収集などである。付加的にはこれまでに実施してきたセムリキ川(ザイール)調査の取りまとめと、化石歯牙や足跡標本の3次元的解析ための予備的研究がある。
主な調査結果としては、まず地質学ではナムルングレ累層の再検討についての示唆である。この累層はこれまでの調査から一つの累層と考えられてきたが、サンブル=ヒルズ南部のモロアベニョウ地域の地質構造調査から、2つの累層、すなわち火山性泥流堆積層を伴う上部の累層と、伴わない下部の累層とに分かれる可能性が示された。ナムルングレ累層は大型ヒト上科の上顎化石を産出した重要な地層であるため、次年度の地質調査はこの点を重視して行い、大型ヒト上科化石の年代を再検討する。
化石の調査では、研究分担者の一人、国松 豊氏が渡航を取り止めたこともあり、フィールドでは広域踏査に重点を置くこととなった。しかし結果としてはモロアベニョウ地域で哺乳類の豊富な多くの化石産地が見つかり、ヒト上科化石の産出見込みも極めて高いとされた。博物館では300個を越えるヒト上科化石の記載と描画を進めると同時に、3次元分析用の精密歯牙・骨格模型を製作し、比較標本模型も多数製作した。ケニアピテクスの形態・系統分析は、樹上生活を保持しつつ堅果・豆類などへの食性変容を示した。これはヒト科における乾燥環境への適応機序を考察する上で重要な発見である。

研究成果

• [文献書誌] 安井金也、牧野内猛、Wim van Neer、平山廉、青木良輔、国松豊、Baluku Bajope、Munyololo wa Yenma、石田英実: "東部ザイール、西部地溝帯、シンダ・モハリ地域における地質学的・古生物学的研究" アフリカ研究. 40. 31-47 (1992)
• [文献書誌] 石田英実、中野良彦、山下真幸、中務真人: "ケニアピテクスのロコモーション様式:尺骨近位部化石の3次元計測に基づく解析" 科研費総合A「ホミノイド(ヒト上科)における二足歩行の起源と進化」成果報告書. 1-6 (1991)
• [文献書誌] M. NAKATSUKASA: "Functional analysis of articular morphology of long bones in Old World monkeys." Primate Research. 8. 185 (1992)
• [文献書誌] M. NAKATSUKASA: "Joint morphology of primates long limb bones." J. Anthrop. Soc. Nippon. 100. 220 (1992)
• [文献書誌] M. NAKATSUKASA: "Functional anatomy of postcrania in Old World monkeys." Abstract XIVth Congress of the international primatological society, Strasbourg.177 (1992)
• [文献書誌] H. MATSUMURA M. NAKATSUKASA H. ISHIDA: "Comparative Study of Crown Cusp Areas in the Upper and Lower Molars of African Apes" Bulletin of the National Science Museum. 18. 1-15 (1992)
• [文献書誌] R. HIRAYAMA: "Fossil Turtles from the Neogene Strata in the Sinda Basin Eastern Zaire" African Study Monographs, Suppl. Issue. 17. 49-65 (1992)
• [文献書誌] R. AOKI: "Fossil Crocodilians from the Late Tertiary Strata in the Sinda Basin,Eastern Zaire" African Study Monographs, Suppl. Issue. 17. 67-85 (1992)
• [文献書誌] K.YASUI Y.KUNIMATSU N. KUGA B. BAJOPE H. ISHIDA: "Fossil Mammals from the Neogene Strara in the Sinda Basin, Eastern Zaire" African Study Monographs, Suppl. Issue. 17. 87-107 (1992)
• [文献書誌] Y. KUNIMATSU: "A revison of the hypodigm of Nyanzapithecus vancouveringi" African Study Monographs.
• [文献書誌] Y. KUNIMATSU: "New finds of a small anthropoid primate from Nachola,northern Kenya" African Study Monographs.
• [文献書誌] H. ISHIDA: "A strategy for long distance walking in the earliest hominids: effect of posture on energy expenditure during bipedal walking." Origins De La Bipedie Chez Les Hominides. 9-15 (1991)