研究課題
1991年は主たる調査対象地をフェティエ近くのゲミレル島とカラジャエレン島とし、9月から10月にかけて8人を派遣した。ゲミレル島では島全体の地形の測量を行ない、初めて正確な地図を作成した。両島には、切り石積みの大規模なバシリカ式聖堂をはじめ長大な歩廊、住居、貯水池、無数の大小の墳墓など、初期ビザンティン時代に建設されたと思われる遺構が残っているが、このうち計5ヶ所の聖堂を実測し、平面図を作成した。また美術的価値の高いゲミレル島第三聖堂の舗床モザイクとカラジャエレン島の墳墓のフレスコ画については特に詳細な調査を行ない、写真や描きおこし図の資料を得た。第三聖堂に散乱していた大理石の祭壇装飾の破片数十点は、各断片を実測、撮影した後フェティエ博物館に搬入し保管を依託した。両島での調査と並んで、調査メンバ-の一部はフェティエ湾周辺の他の遺跡を訪れ、概括的な調査を行なった。両島に近い廃市カヤをはじめ、クサントス、アスペントスなどの古代・中世の遺跡において都市計画と建築を調査し、資料を得た。また現地滞在中に、ム-ラ県の文化局長、フェティエ博物館長、ボドルム博物館長らと数回にわたり研究交流を行ない、遺跡保存や水中考古学調査など今後の事業の可能性について討論した。なお、今回調査した両島の遺跡は、これまで未調査、未発表であったばかりでなく、まとまった形をとどめるビザンティン都市遺跡としては他にほとんど例を見ない貴重なものである。また、東西の海上交通や文化交流、キリスト教聖地巡礼といった視点からも、今後解明するべき多くの問題を含んでいる。
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