研究課題
平成4年度のゲミレル、カラジャエレン両島の現地調査では、次のような研究成果が得られた。1.カラジャエレン島の地形測量。同島の輪郭を測量し、千分の1縮尺の地図を作成した。昨年度のゲミレル島とあわせ2島の地図が得られたことにより、両島の建築や都市計画の正確な調査を進めることが可能になった。またゲミレル島の中腹に長さ数百mの城壁が延びていることを確認し、既に発見していた長さ160mの回廊とあわせてその位置を地図上に記入した。2.主な聖堂建築の測量。今年度はゲミレル島の聖堂II、III、IV、及びカラジャエレン島の聖堂と、それに近接する建築物の平板測量を行い、百分の1の平面図を作成した。またこの平面図をもとに、各聖堂建築の詳細な調査、記述の作業を開始した。この過程で、聖堂各部の機能や参詣者の動線の分析により、これらの聖堂が多数の巡礼の参集に対応して建設されたことが判明しつつある。3.洗礼槽の実測。カラジャエレン島聖堂の洗礼槽を清掃、実測し、十分の1の平面・断面図を作成した。4.表層遺物の採集、分析。両島の数箇所の地点を区切って表層に散らばる土器、陶器片のサンプルを採集し、制作年代・地域を求めるための分析を始めた。これにより、両島の活動時期や両島をめぐる通商の範囲などの歴史的研究の傍証が得られると期待される。5.フェティエ湾と両島周辺の一般調査。文献資料及び現地での情報を手がかりに、この地域での遺跡の分布状態を実地調査した。これにより、両島ほど高密度で建築遺搆が集中している遺跡はこの近辺では他に例を見ないことがわかった。またゲミレル島対岸の本土側海岸において、ゲミレル島聖堂IIと同規模の聖堂遺搆を新たに発見した。
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