研究課題/領域番号 |
03041051
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小松 和彦 大阪大学, 文学部, 助教授 (90111781)
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研究分担者 |
RUBINSTEIN D グアム大学, ミクロネシア地域研究センター, 準教授
柄木田 康之 鹿児島大学, 南太平洋海域研究センター, 助教授 (80204650)
印東 道子 北海道東海大学, 国際文化学部, 助教授 (40203418)
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キーワード | カロリン諸島 / 歴史媒体 / トラック島 / ファイス島 / オレアイ環礁 / 口頭伝承 / 先史文化 / 社会構造 |
研究概要 |
社会・文化人類学担当の研究者はミクロネシア連邦トラック州の北西離島、ヤップ州ファイス島、同州オレアイ環礁で口頭伝承、儀礼、系譜、ライフ・ヒストリ-などの歴史媒体に関する聞き取り、参与観察を行った。この結果、各調査地域についての土地所有集団・出自集団の起源伝承が採集されるとともに、カロリン諸島内の島嶼間の移住に関する口頭伝承が採集され、各地域が移住伝承によって相互に結びつけられていることを確認した。現在、採集資料の整理・分析中であるが、これらの伝承は単に過去を記憶するばかりでなく、土地保有権や首長権と密接に関連していることが明らかとなってきている。これに対して、キリスト教への改宗のためか、儀礼・宗教的遺物を通じての過去の記憶の事例は極めて少なく、ファイス島とオレアイ島では、第二次世界大戦の経験が歌謡や儀礼を通じて記憶されているにとどまった。その中で、北西離島の各島では、およそ百年前の北西離島を二分して争われた大きな戦争のことが生々しく語り伝えられていることが注目される。先史学担当の研究者は、民族誌的調査資料の背景を踏まえたうえで、ヤップ州ファイス島ので発掘調査を行った。この結果、サンゴ礁島では、これまで報告が稀な文化層を発掘し、ミクロネシア最古と考えられる家畜骨(約1900年前の豚の骨など)や約2000年に及ぶ住居跡など、画期的な資料の発掘に成功した。特に、出土した釣り針の形状から、ファイス島とメラネシアのソロモン諸島付近との間で、数次にわたる文化接触があったことが推定できる。ファイス島は西方のヤップ島との間断なき接触を保っており、次年度は、資料の細な分析を通じて、社会・文化人類学調査から得られた島嶼間の関係と、先史学調査から得られた島嶼間の関係の相互関係を把握することが課題となるだろう。
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