研究分担者 |
ポンペン ハントラクーン シンラパコーン大学, 文学部, 助教授
スリチャイ ワンケオ チュラロンコーン大学, 政治学部, 助教授
関 泰子 津田塾大学, 学芸学部, 助手 (80236075)
野津 幸治 天理大学, 国際文化学部, 講師 (40208369)
高井 康弘 大谷大学, 文学部, 講師 (00216607)
松薗 祐子 いわき明星大学, 人文学部, 助教授 (00164799)
橋本 卓 天理大学, 国際文化学部, 助教授 (00208448)
村嶋 英治 成蹊大学, 文学部, 助教授 (70239515)
清水 由文 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (40132352)
PORNPEN HANTRAKOOL Assistdnt Professor, Faculty of Arts, Silpakorn University.
SURICHAI WUN'GAEO Associate professor, Faculty of Political Science, Chuldlongkorn University.
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研究概要 |
1987年に実施したバンコクの中心から15Km離れたバンカピの農村と東部の中心都市チョンブリ市に隣接する移住者から構成される地区の5年間の変化を探る追跡調査と,東部臨海開発計画の進展に伴うチョンブリ県の農村の変化を明らかにするという新たな計画を含海開発計画の進展に伴うチョンブリ県の農村の変化を明らかにするという新たな計画を含めて,1991年の調査は行われた。 今年度は,昨年の調査のデータの集計や資料の整備を行うことに重点を置いて,研究に取り組んだ。その結果として得られた知見は以下のようである(詳しくは,中間報告を参照されたい)。 1. バンコク近郊農村について この4年間のタイ国の年率二桁に上る経済成長率は,例えば賃金を年々上昇させていき,所得の上昇をもたらすと同時に所得配分の地域間格差を大きくした。また,都市周辺では,土地に対する投機を引き起こし,毎年倍増するくらいの土地価格の増大を招いている。このことは,バンコク首都圏でもっとも著しい。調査村でも90年代初頭には,1ライ(=0.16ha.)当たり100万バーツを超える地価となり,著しい都市化の波にさらされている。この地価の上昇と都市化が,それまでの農業経営や生活の在り方に最も大きな変化を与えている。都市化の影響は,周辺に大資本によるゴルフ場や,サファリパークの建設という従来の景観を一変させるような施設をも造りだしている。ゴルフ場の建設ブームは,新たに芝生の育成という園芸農業と所得の上昇をもたらしている。 すなわち,伝統的な米作に基づく農業経営とそこから生まれる農民の意識・生活様式が,急激に変化しており,都市住民の意識や生活様式と変わらなくなりつつある。 2. チョンブリ市に隣接する居住地区について 80年代後半から90年代初頭にかけて,大きく進展している東部臨海開発計画の中心都市の一つであるチョンブリ市は,労働市場を拡大しており,労働力不足を引き起こしている。したがって,仕事を求める労働者をチョンブリ市は引き寄せている。この居住地区も,仕事を求めてチョンブリ市に移住してきた労働者が住み着いて発展してきた。その多くは,インフォーマルセクターに属する仕事に従事している。しかし,4年間の経済発展は,彼らに対しても果実を分配して,生活水準を改善している。これは,あくまでインフォーマルセクター内部のことであり,賃金労働者として上昇していく可能性をもつ層には違った属性が見られる。それは,(1)特にバンコクを経由して来住した者が多いこと,(2)教育水準が中等教育程度であること,といった違いがある。近代産業のなかで地位を得るためには,より高い教育を受けることが,必須になっている。移住者は,長く住みつく傾向にあり,地区の改善計画も始まった。 3. チョンブリ市周辺農村について チョンブリ県の工業化の進展は,伝統的な米作農村にも,大きな変化を生み出している。灌漑設備がほとんどないため,単位面積当たりの収量が低く,したがって経済的に余裕の乏しかった村が,やはり90年前後から大きく変化している。調査村の変化は,米作から商品作への転換が行われたのが,この時期である。養魚と養鶏という形で進展している。後者はアグリビジネスの大資本が,養鶏を扱う区長(プーヤイバーン)を仲介役として直接村人と結びついている。前者の経営は,農民の投資によって田を池に変え,そこにティラピアやなまずを飼っているのだが,景観的に見ても従来の田を中心とした眺めが消えて池になり,池にすることで元の田には戻せないという大きな農業経営の変容をもたらしている。これによって調査村は県で第一位の開発モデル村になった。また,区長の持つ経営者としての能力が,とても重要になっている。 以上が,三つの調査地の変化や知見だが,すべてに共通するのは4年間のタイの経済発展がこれらの調査地の急速な変化をもたらしたということである。
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