研究課題
予定したU.P.州Varanasi市近郊の2ヶ村(Chiraigaon,Khardaha)と同市の新興住宅地(Ashok Vihar)の調査は、計画通り完了した。調査は、1967年に実施した全村悉皆調査結果に、現状と変化に関する新たな項目を加えた面接調査表により、家族構成、就労、就学、農業、工業、消費、等々にわたって実施した。さらにこれを基に生活様式や意識などに関する抽出調査を行った。又新住宅地では、離村第一世代を対象に、生活実態と農村とのかかわり合いをたずねた。その結果は、目下詳細なデ-タ処理をすすめているが、おおよそ次のごとくである。調査2村に関しては、この24年間に、急激な核家族化がすすみ、人口は約20倍に留まったが、世帯数は約2.6倍になった。農家では、なお大家族制を残しながらも、土地所有の細分化、経営規模の零細化がすすんでいる。又機械化や潅漑施設の導入、農薬の普及など農業近代化も著しい。一方食生活の向上によって、米・小麦などへの作物の特化も進み、伝統的な粗粒穀物が比重を下げてきた。こうした農業の変化は、現金収入を求める動きとなって、都市への通勤や出稼ぎの動きを加速してきた。一方、ジャ-ティ-を基本とする村落の社会構造は、生産手段の所有とのかかわりから、今日なお伝統的な形を留めるが、バタイ制の実質的衰退の中で、変化のきざしを見せ始めてきた。ただ子弟の教育に対する対応や、村落の諸行事での役割ではなお伝統の枠を越えることの困難さが認められた。新興住宅地では、農村出身者が比較的気楽に、都市的生活に対応している。しかし、ほとんどは出身集落の社会システムとのしがらみをひきづりながら生きている。なお以後の本格的分析において、住民と社会を主眼に、インド農村の変化と停滞の因果的解明をすすめる。