研究概要 |
上記テーマによる,日印共同調査研究は,2年目を迎え,1992年度は,西ベンガル州の農村と都市の調査を予定通り終了し,目下分析中である。 まず,農村に関しては,ミドナプール県下のラダバラブプール村とテントルベリア村の調査を行なった。これは,1昨年のUP農村の場合と同様,1967年に実施した悉皆調査データを基にした再調査で,この四半世紀の間に,農村開発計画を中心に諸計画の実施の中での農村の変貌を個々の家族及び家族構成員レベルで見ようとしたものである。調査は別紙調査票により悉皆で行なった。この期間の西ベンガルの大きな変化は(1)灌漑施設の普及による高収量品種「タイチュン」の冬季作が可能になった。(2)州政府により耕作料の配分基準が小作有利に変更された。(3)中心都市カルカッタの吸引力が減退し,在村潜在失業者が多数出てきたことなどであった。ラダバラブプール村では,カヤスタを中心にした地主層の都市への流出が加速し,マヒーショウを中心にした自小作層は一部が営農規模を拡大して安定に向かい,零細農は,織布業やベテル栽培へ特化して来た。村落社会は,大きな再締期を迎えていると言える。テントルベリア村は,ハルディアへの用水確保のための取水施設が建設されて,広い耕地を失い,大規模農は,すすんで村外に就業し,小農は,ベテル栽培に,農業労働者は,村での就労の機会がなくなり,困窮度を高めてきた。 都市との結びつきに関しては,カルカッタの中心部,カスバ地区の公営アパートの,農村出身第一世代を対象に調査した。その分析は,農村分析にひき続いて行なう予定であるが,多様な結びつきが出ることが予想できる。
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