研究分担者 |
ASOMBANG R.N カメルーン高等教育研究省人文科学研究所, 人類学研究センター, 研究員
CHANDA R. 国立ザンビア大学, 自然科学部, 上級講師
TSALEFAC 国立ヤウンデ大学, 人文社会学部(カメルーン), 講師
KUETE M. カメルーン高等教育研究省人文科学研究所, 国立地理研究センター, 研究部長
DONGMO J.ーL. 国立ヤウンデ大学, 人文社会学部(カメルーン), 講師
OJYANY F.F. 国立ナイロビ大学, 文学部(ケニア), 教授
篠田 雅人 東京都立大学, 理学部, 助手 (30211957)
中条 廣義 中部大学, 国際関係学部, 教授 (80207315)
岩崎 一孝 北海道大学, 文学部, 助教授 (90176537)
武内 和彦 東京大学, 農学部, 助教授 (90112474)
八木 久義 東京大学, 農学部, 助教授 (80191089)
田村 俊和 東北大学, 理学部, 教授 (00087149)
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研究概要 |
平成元,2年度に北部(カメル-ン)・南部(ザンビア・ジンバブエ・マラウイ)両アフリカで行った現地調査で得たデ-タ,並びに既存文献・資料を解析・整理して総括作業を行い,次のような成果を収めた欧文報告書を取りまとめた. 1.北部アフリカ(カメル-ン) 1)東部森林ーサバンナ境界地帯の半落葉樹林,ギャラリ-フォレストの組成・構造と土壌断面との関係を考察し,森林後退とサバンナ化の過程に関するモデルを構築した. 2)西部高地グラスフイ-ルドでは、ボ-リング・コアの花粉分析と放射性炭素年代測定に基づいて,森林の後退に伴うサバンナ化・草原化が3,000ー2,500年B.P.に始まり,2,000ー1,500年B.P.以後本格化してきたことがわかった.また最終氷期末寒冷期の同地域では,マキ属等山地林構成要素が現在よりも低標高まで下降していたことを確認した. 3)西部高地の草原放牧斜面について,現在の気候並びに人為的インパクトの条件下で進行している土地・植生劣悪化の微細過程を地形/土壌断面/植生/侵食様式の相互関係に基づいてモデル化した. 4)北カメル-ンの乾燥サバンナーステップ地帯を例に,持続する干ばつと人為インパクトとの相乗作用によって進行する半乾燥地帯の土地・植生の劣悪化過程,「サ-ヘル化」・「砂漠化」過程の一般化を試みた. 5)過去約10年来,西部高地の残存山地林と南カメル-ン高原の熱帯雨林が,前者では森林保護区の無法な一斉開拓,後者では焼き畑休閑期間の短縮(3ー5年以下)により,急速に退行している事実を明らかにした. 2.南部アフリカ(ザンビア・ジンバブエ・マラウイ) 6)ザンビア西部のカラハリ砂層地域のミオンボ・ウッドランドは,地形/表層地質/土壌/植生の相互関係と埋没土壌のCー14年代に基づいて,2,500年B.P.項にその兆しが現れた森林に対する人為の干渉の,1,000年B.P.項からの広域化,400年B.P.以降の強化,という過程を経て形成されたことを明らかにした. 7)以上の年代は,製鉄技術をもった農耕民の到着と拡大の時期,並びに頻繁な火入れを伴う農耕活動の活発化の時期と,それぞれ対応するものと推定される. 8)ザンビア・マラウイにまたがる海抜2,000m前後のニ-カ高原に広がる草原は,数百年前に製鉄専業民が侵入し,燃料材を得るため常緑樹林を集中的に伐採したことにその成因が求められる.残存林下では安定した環境が持続して腐植が厚く堆積し,土壌下層への粘土集積が進んでいるのに対して,草原部ではそれ以来土壌侵食が活発化して表層が剥離され,土壌の劣悪化が進行している. 3.赤道森林域を通じて、特にその縁辺部では,3,000ー2,500年B.P.以来気候の乾燥化と人為インパクトとが相乗して,森林の退行とサバンナ化が進行してきたという共通性が認められる.しかし,人為インパクトの微弱な時代には,伐採ー耕作ー放棄ー森林再生というパッチワ-ク状のサイクリックな変化が繰り返されてきたと思われるが,その詳細の復元は今後の課題として残された. 4.最近の「砂漠化」・サバンナ化を促進してきた1960年代末以来の干ばつの原因は,熱帯内収束帯ないし降水帯の変位ではなく,大気のグロ-バルな東西循環の異常に起因する対流活動の不活発化に求められる. 5.「砂漠化」・サバンナ化に伴う地表面ー大気の相互作用の変化の追究は,残された重要課題である.
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