研究課題
本研究の目的はE型肝炎蔓延の現状を血清疫学的に明かにし、その撲滅の為の予防法を確立することにある。そしてE型肝炎の流行地の内、中国のウイグル自治区とネパ-ルを調査の対象とした。1.E型肝炎ウイルス中国株のクロ-ニングと塩基配列の決定:1990年秋にウイグル自治区のトルフアンでE型肝炎の小流行があった。その患者の糞便からE型肝炎ウイルス中国株の遺伝子のクロ-ニングと塩基配列の決定を行った。現在全塩基配列の内70%の塩基配列を明らかにした。その結果3'末端に近い構造領域でE型肝炎ウイルスビルマ株とのホモロジ-核酸レベルで93%であった。ヒマラヤ山脈の南と北ではウイルスが若干異なることが明かにされた。2.診断の為の抗体アッセイ系の確立:ビルマ株から免疫スクリ-ニング法でピックアップした3'末端に近いクロ-ンの一つがコ-ドするペプタイドを大腸菌で発現させ、これを抗原として抗体のアッセイ系をEIA法で作った。この抗体のアッセイ系をかにくいざるの実験で経時的に取った血清に当てたところ、トラスアミナ-ゼの上昇しはじめる頃から陽性になり、回復して2ー3カ月後消失することが明かになった。つまりこの抗体のアッセイ系は急性のE型肝炎の診断にはきわめて有用であるものの、過去にE型肝炎に感染したかどうか知る為には使用できないものである。現在別のクロ-ンのペプタイドを発現させそれを抗原のアッセイ系を作るべく作業を進めている。3.カシュガル及びトルフアンの疫学調査:感染の多くは飲料水の汚染によると思われる。カシュガルでは町の所々にある溜池の水が飲料水として使用されていた。トルファンには昔掘られた有名な地下水道があり、素堀の水道が、ただ穴を浅く堀っただけの便所から汚染された。
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