研究分担者 |
登内 正治 川崎地質株式会社, 開発部, 部長
西本 真一 早稲田大学, 理工学部, 講師 (10198517)
高橋 龍三郎 近幾大学, 文芸学部, 講師 (80163301)
谷本 親伯 東都大学, 工学部, 助教授 (10109027)
森 啓 東北大学, 理学部, 教授 (00004466)
菊池 徹夫 早稲田大学, 文学部, 教授 (00147943)
櫻井 清彦 昭和女子大学大学院, 生活機構研究科, 教授 (60063195)
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研究概要 |
1992年8月下旬から10月上旬にかけて,アブシールのピラミッド群の南方約1.5Kmに位置する丘陵頂部において発掘調査を行ない,冬期にはひきつづき出土遺物の整理作業を実施した。 91年度の発堀成果によって,本遺跡は第19王朝のラメセス2世の王子カエムワセトに関わる建造物と想定された。同人物の墳墓はこれまで未発見であると共に,遺跡自体が周辺の遺跡集中区とは涸れ谷を挟んで孤立した砂漠の丘陵頂部にあり,その特殊な地理的環境が注目された。今回の発掘調査では,昨年度の調査で確認された床面の平面的広がりを追うと共に,遺構の性格解明と破壊に至る過程を明らかにすることがその主目的となった。このために従来の発堀区の南北に幅3mと5mのトレンチを設定した。 発堀調査の結果,石敷きの床面は,片側に少なくとも6本の柱を含む列柱室を構成していることが明らかとなった。列柱室の奥にはさらに2室が存在し,長軸は20mを超える規模である。上部構造は完全に破壊されているが,列柱室では4mを越える立ち上がりをもつ束ね柱が用いられていたと考えられる。 発堀地区から出土した石灰岩レリーフには,偽扉装飾,供物を捧げる場面,神々の行列場面などがあり,それぞれ陰刻・陽刻という異なる技法で製作されている。レリーフは遺構の復元と性格解明に密接な手がかりを有することから,モチーフと製作技法の分類に基づく平面分布の解析が進行している。なおレリーフの中には,カエムワセトに対して一般的に用いられる称号類も新たに確認された。 発堀作業の折の層位観察では,新王国末期に構築された建造物がローマ時代には廃棄され,さらに後世に至って石材取りのために破壊されたいくという過程が想定されており,土器・ランプなどの遺物から存続年代の細部を検討している。
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