研究課題/領域番号 |
03041086
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
野村 暢清 久留米大学, 比較文化研究所, 教授 (90036955)
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研究分担者 |
アンドレス・ロペス グアダラハラ, アウトノマ大学・人類学部, 教授
山崎 将文 久留米大学, 比較文化研究所, 研究員
中別府 温和 西南女学院短期大学, 助教授 (00155805)
福間 利英 久留米大学, 医学部, 教授 (90125146)
水波 朗 九州大学, 名誉教授 (50037058)
LOPEZ Andres Professor of The Faculty of Anthropology of Guadalajara Autonoma University
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研究期間 (年度) |
1991
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キーワード | カトリシズム / コンパドラスゴ / 社会的ドラマ / トマス主義憲法学 / エヒ-ド / リ-シュマニア / 病気治療 / 奇跡 |
研究概要 |
我々は従来カトリック村落における宗教文化の分析を試みてきたが、ここで宗教と法と医療の問題に関わっていこうとする。宗教と法と医療は古くから関連し合って存してきたこれらの統合的関連の姿をメキシコ村落を一つの事例として、人間の具体的生活の中が実証的に明らかにしようとする。 メキシコの一村落トラホムルコをとらえて、そのカトリシズムの社会構造の分析を行ってみようとする。空間や時間に関する分析を行ってきているので、ここでは社会構造の二つの局面を中心にとらえてみた。一つはコンパドラスゴの姿であり、他はポッサ-ダとクルシフィカシオンの社会的ドラマに関わる。前者はカトリック的儀礼・洗礼・堅信・プリメ-ラコムニオン・結婚をとおして村落内にはりめぐらされる非常に親しい神とつながる社会的結合関係である。一つの家族のコンパドラスゴが200名をも含むという姿を取り出したものである。後者は一つの聖なる思考のビビッドな現実的な姿の共有と再現に関わるものである。イエスの誕生と死の場面を強い現実性をもって集団的にドラマとして再現する。これはカトリシズムの中心的感覚の強化につながる(野村暢清) メキシコの憲法、ことにブルゴアの憲法の先進性は独・仏・ベルギ-・スペイン・ラテンアメリカなどで台頭してきた最新のト-マス主義国法学を受け入れて、その実定憲法学を革新しているところにある。そしてこの研究は二つの点で比較憲法に貢献することをめざしている。第一には、諸国家の憲法を比較文化的視野を欠いて表面的に比べることの無意味さを警告することであり、第二に比較が可能であるためには、比較の共通項が自覚されていなければならないということである。この共通項は国民の憲法生活の基本法測への万人斉一の本性適合的洞見であるとの見解である(水波朗)。 1917年のメキシコ憲法が世界憲法史の中で高い評価を受けている。これはメキシコ憲法の27条にもとづく。それは社会国家における所有権の制限という方向を規定する行き方に関わるものである。この27条は1919年のワイマ-ル憲法153〜155条とともに高い評価を受けているものである。この27条はエヒ-ドに関する諸規定を含んでいる。それは土地所有の形態が共有であること、その共有地を各自の割当地に分けて個別に耕作し、その割当地は売買、貸借等の対象にはならないこと、その割当地の耕作を怠った者は土地を没収されることなどの考えを含んでいる。ところで、このエヒ-ドのシステムは日本のかつての公地公民と同じように種々の問題を生じてきており、人によっては最良の農地法とされ、人によっては最悪のものともいわれる。しかし、このエヒ-ドの体系が現在のメキシコの農地全体の中で占める位置は大きい。このエヒ-ドと小土地所有者の農地とが各村落の耕地の中核を構成している。このエヒ-ドのシステムは最近大きな変革をこおむってきている(山崎将文)。 メキシコの寄生虫症について、リ-シュマニアを中心として分析を行った。それはスナバエによって媒介されるものであり、病原体は住血鞭毛虫に属するリ-シュマニアという原虫である。このハエがとまると、内臓・皮膚にその病原虫がうえられ人体の中でそれが成長し人々を死にいたらせるものである。この研究はメキシコが現在置かれている文化的地理的状況を示す一つの問題点である(福間利英)。 ウィチョ-ル族の文化はその祭司であるマラカメを中心にして展開している。これは宗教的指導者であり、同時に政治的役職者でもあり、また病気治療者でもある。マラカメの病気治療の際には、手でマッサ-ジし病気を口で吸い出し患者に提示することがその中心を構成するが、そのマラカメは治療場面で十字架にも関わる。この吸い出しによる治療はシャマニズムの分析に対して非常に興味深いメカニズムの存在を指示するものでもある(アンドレス・ロペス)。カトリック村落マニの病気治療は、呪医祭司であるメンによって行われる。メンの病気治療は病因と治療法にマヤ・ユカテカの伝統的内容を含む一方で、教会の聖像を中心にしたカトリック的病因論や治療法をも含んでいる。具体的には、聖像の懲罰としての病気の解釈がなされて、聖像の奇跡の治療との関連で生々と語られる。さらに、聖像のための祝祭が病気治療との深い連関の中で存続させられてきてもいる(中別府温和)
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