研究分担者 |
飛松 敬二郎 工学院大学, 工学部, 講師 (40237102)
近 匡 成蹊大学, 工学部, 助手 (90215442)
矢崎 茂夫 北里大学, 教養部, 教授 (10011743)
神保 雅人 東京経営短期大学, 経営情報学科, 助教授 (10226392)
五十嵐 正敬 東海大学, 理学部, 教授 (90147116)
石川 正 高エネルギー物理学研究所, データ処理センター, 助手 (90184481)
栗原 良将 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助手 (50195559)
藤井 恵介 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助手 (30181308)
宮本 彰也 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助手 (50174206)
藤本 順平 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助手 (90202291)
日笠 健一 東北大学, 理学部, 助教授 (20208739)
萩原 薫 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助手 (50189461)
東島 清 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (10092313)
川端 節彌 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助教授 (40152996)
KON Tadashi Seikei University
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研究概要 |
現在,いわゆる素粒子の標準模型により,ほとんど全ての現象が理解できたかの観があるが,それが最終的な理論でないことは周知のことである。理論の大きな前進は新現象の発見と理解によってのみもたらされる。また標準模型のパラメタの精密な決定も必要である。このプロジェクトではTRISTANで世界最高のエネルギー領域を探った実績をふまえて,より高いエネルギーでのCERNのLEP実験に関して,現地で活躍する実験家,理論家と研究交流を行い,資料を収集した。LEP実験では既に膨大な事象数のデータが得られており,これを精密に解析して新現象の可能性を探った。 研究を推進していく過程で,高次の輻射補正計算を遂行するためには,散乱振幅の自動的な生成と,それにつながる数値計算や位相空間での数値積分,さらにはそれに接続するイベント・ジェネレータなどが重要であることが認識されてきた。このような認識は,CERNにおいて接触することができた他の研究者によっても示され,すぶにフランス,ロシア,ドイツ,オランダなどに同様の目標を持つ研究グループが存在することが明きらかとなった。本プロジェクトを実り多いものとするため,これらのグループとの研究交流が行われた。なお,このような目標をより効果的に追求するため,別に科研費のプロジェクト「ファインマン振幅の自動計算と高エネルギー実験へのその応用」が平成4年度からスタートし,本プロジェクトの成果の重要な部分を引き継いでいる。 本年度に得られた具体的な成果を以下に列挙する。 1. LEPでのе^+е^-→qqγ過程およびその1ループQCD補正をを調べた。質量特異性の処理について,日本側では質量を持ったクォークとグルオンの微小な質量による正則化を用い,フランス側は質量のないクォークで次元正則化法を用いた。結果を相互に比較し,LEP実験の結果と比べた。 2. LEPでの終状態に2つのレプトンと2つの光子が現れる事象が見つかり新現象ではないかとの意見も示された。これについて自動計算システムGRACEを使って,電弱相互作用から予測されるバックグラウンドシグナルを正確に計算し,このシグナルは標準模型から期待される水準を上回ることが示された。いまのところ実験グループ間の違いもあり,新現象と断定はできないようであるが,自動計算システムの利点がこの経過で示された。 3. 同じく自動計算システムGRACEを使って,LEP II,JLCなどの次世代加速器で研究される,3体ないし4体の終状態の断面積が組織的に計算された。これらの結果の一部について,モスクワ大学グループと共同研究を行い,かれらのcompHEPシステムの結果との相互比較を行った。 4. QCDパートンシャワー模型の結果と解析的な計算による高次補正を入れたスラスト分布を実験データと比較し,QCDの結合定数を求めた。 5. このQCDパートンシャワーの手法をQEDに適用し基本的な過程に対してQEDの高次補正を汎用的に適用することが可能となった。 6. ループを持つ振幅の計算で既に1ループ振幅の計算のために開発された数値的手法を2ループ振幅にも適用できるように拡張し,いくつかのグラフについて計算を行った。 7. 素粒子理論での計算を簡単化し出力を短縮して計算時間を大きく縮めてくれるような数式処理システムの開発が行われた。その手法をガンマ行列を含む表現の計算に適用し,いくつかの場合には式が大きく簡約化されることが示されたが,これは万能ではなく改良が必要であり,今後の研究に待つことになる。 8. 今後の加速器実験で新現象として期待されるような,超対称性粒子が関与する過程がいくつか調べられた。偏極電子ビームを使ったときの超レプトン生成や,電子光子衝突での超レプトン生成を調べ,期待されるシグナルの大きさを見積もった。 9. 数値積分の新しい方法について調べた。この結果は微分断面積の位相空間での積分などに適用可能である。
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