研究課題
北部タイにおいては、チェンマイ近郊のリス族の村落と、チェンライ県に分布するアカ族のいくつかの村落を中心に、調査を行った。特にアカ族については、メ-サロン地区の数ヵ村について、それぞれ楽器、舞踊、歌の特徴を押さえると共に、チェンライ県メ-スアイ郡のアカ族のブランコ祭りの全容を、記録することができた。タイ国内のアカ族は、ウロ、ロミ、パミの3集団に分かれるが、これら集団の差異の概要を押さえると共に、今回は、中でもウロアカの持つ音楽文化の実態を明らかにすることができた。メ-サロン地区は、中国国民党出身者を中心とする漢民族(ホ-族)の拠点であり、山地民族と関係を保ちつつ、一つの地域社会を形作っているが、これらの諸民族は、その多くが比較的最近、中国雲南省から移動している。今回の調査で、彼らが故地の文化を伝えている点が明らかになったが、これは、今後、雲南省との比較研究を進めていく上で、重要な足がかりになると思われる。当初、北部タイ山地に分布する、チベット・ビルマ語系の民族のうち、カレン族、リス族、アカ族に焦点を定めていたが、アカ族特有のブランコ祭りの調査が中心となった為、得られたデ-タは、アカ族のものが中心となった。しかし、従来の調査によって得られた中国雲南省に居住する同じ系統のハニ族の文化との共通性および、変容に関する比較を通して、アカ族の民族音楽研究上多くの成果をあげることができた。中国における調査研究に関しては、民博や研究代表者の藤井、分担者の塚田を通じて常に中国研究者との接触が行われており、新たな情報等の収集は着実に進展している。
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