研究概要 |
ラトガース大学のハリングトン教授を中心とするグループと,誘電体内装金属中空導波路を研究している東北大学,及び日立電線(株)の研究グループの間で,討論,情報交換,国際会議の開催等を通し,中空導波路の低損失化,内装導波路の実装技術,サファイア中空導波路の製作・評価,中空導波路の応用等の研究を行なった。得られた研究成果,ならびに今後の課題は以下の通りである。 1。誘電体内装導波路の低損失化 内装誘電体として,ゲルマニウム以外の材料について検討を行なった。円形断面を有する中空導波路では,セレン化亜鉛,次いで硫化亜鉛を内装することを試みた。その結果,硫化亜鉛内装銀中空導波路は低損失性,耐候性の上で極めて良い特性を有する事が分かった。更に,低損失化がなされるにつれて,導波路内面の粗さが無視できなくなり,内面粗さの極めて少ない導波路製作法を考案し,現在,その手法に従って道波路の製作を行なっている。 2。誘電体内装導波路の実装技術 内装導波路でKWオーダの炭酸ガスレーザ光の伝送を可能にする為に、導波路外部からの水冷法、内部からのガスによる空冷法について検討を行なった。また、長尺の導波路を実現するためには導波路の接続は避けられない。そこで、接続部で高次モードの発生を少なくするよう、メッキ法による接続法を採用した。その結果、長さ4メートルのゲルマニウム内装銀中空導波路を製作し、3KW入力に対し安定に動作する導波路実装技術を開発することに成功した。数ミリメートルの管径を持つ導波路でこのようなKWオーダの赤外光を伝送したのは世界で始めてである。 3。サファイア中空導波路の研究 炭酸ガスレーザ光の波長を含む広い波長で,複素屈折率の実部が空気の屈折率1よりも小さくなる材料としてサファイアに着目した。EFG法を採用して細径の中空導波路を製作し,導波路の伝送特性を評価した。導波構造か全反射型ゆえ,損失値としてはかなり小さな値は得られたが,この値はMS理論,及び特性方程式より求めた価よりはるかに大きかった。この原困について理論的,実験的に調査した結果,サファイア結晶成長が均質に行なわれていない事に困るものであることが分かった。現在,成長法の改善を行なっている。また,鉛を含むある種のガラスは波長9。5ミクロン付近で屈折率が1よりも小さくなることが分かったので,線引法によって,中空導波路を製作した。しかしながら,複素屈折率の虚部は比較的大きく,それほど大きな損失の改善が行なわれなかった。 4。中空導波路の赤外計測への応用 中空導波路は端面での反射がないこと,導波路の内外部から冷却が可能であるので大きな光電力の伝送に適している。中空導波路の用途を広げるために,赤外中空導波路の計測への応用についても検討した。波長3ミクロンから12ミクロンに亘って透過率が極めて高い硫化亜鉛内装銀中空導波路を用いメタンガス,及びブタンガスの検出実験を行なった。しかし,硫黄酸化物,窒素酸化物の計測では硫化亜鉛膜はこれらのガスでは侵された。そこでこれらのガス検出も可能なような全反射型ガラス導波路を開発した。 5。国際会議の開催 1991年9月5日,6日の両日,ボストンのハインズコンベンションセンターで,SPIEの援助のもとに赤外導波路,赤外計測をテーマに国際会議を開催し,各国の研究者と情報を交換した。次回を1993年アメリカ西海岸の都市で開催することにした。
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