マイクロバイオセンサ-の開発

1991 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 03044047
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 軽部 征夫 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (50089827)
• 研究分担者: ROLF Schmid ブランシュワイク工科大学, 教授 ; JEANーLOUIS M ペルピニアン大学, 講師 ; MAURICE Comt ポール, サバチェ大学, 教授 ; PIERRE Coule リヨン大学, 教授 ; DANIEL Thoma コンピュータ工科大学, 教授 ; 横山 憲二 東京大学, 先端科学技術研究センター, 客員研究員 (80242121) ; 関 篤志 創価大学, 工学部, 助手 (70226629) ; 鈴木 正康 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助手 (70226554) ; 久保 いづみ 創価大学, 工学部, 助教授 (40214986) ; 民谷 栄一 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教授 (60179893) ; SCHMID Rolf Braunschweig Institute Technology ; MARTY Jean-Louis Perpignan University ; COMTAT Maurice Paul Sabatier University ; COULET Pierre Lyon University ; THOMAS Daniel Compiegne University
• 研究期間 (年度): 1991
• キーワード: バイオセンサ- / 環境計測 / 微小バイオセンサ- / 酵素センサ- / 医療分析 / 固定化酵素

研究概要

生体のもつ分子識別機能に着目して作製されたバイオセンサ-は医療分析、工業プロセス計測、環境計測などにきわめて有力な分析システムである。近年、研究代表者らのグル-プは半導体加工技術などを用いて、バイオセンサ-の微小化及び大量生産化に成功しており、各種バイオセンサ-の実用化を強力に推進することができる見通しを得ている。本研究課題では免疫センサ-、医療用酵素センサ-、環境計測用バイオセンサ-の研究の盛んなフランス・ドイツのグル-プと共同研究を遂行し、各種マイクロバイオセンサ-の開発及びそれらの実用化を図る。具体的には以下の示すように研究調査及び共同研究を遂行した。
民谷助教授(東大先端研)は、ブライシュ工科大学、ペルピニアン大学を訪問、滞在し、共同研究を実施した。特にブライシュ工科大学では、シュミット教授らが新規に合成した人工脂質を水晶振動子上にLB膜法によって固定化し、これを用いて安定なにおいセンサ-を作製するための基礎特性を検討した。ペルピニアン大学では、農薬センサ-開発のために研究討論を実施した。博士課程の学生を軽部研に派遣し、具体的に共同研究を実施することとなった。
横山博士(東大先端研)は、ポ-ルサバチエ大学・モ-リスコンタ教授の研究室に滞在した。コンタ教授は、電気化学的手法によるNAD_+の再生産に関する研究を行っている。すなわちNADH酸化酵素であるジアホラ-ゼ、メディエイタ-であるフェリシアン化カリウムを用いNAD^+を電気化学的にリサイクルするものである。最近では、これと乳酸デヒドロゲナ-ゼとを組み合わせた乳酸センサ-に関する研究も行っている。また分光電気化学測定により、酵素反応と電気化学反応を同時にモニタリングしている。これにより乳酸センサ-作製の最適条件を見しだしている。一方、横山は、微小バイオセンサ-の専門家であり、滞在中に、直径30μmの微小白金極上に乳酸デヒドロゲナ-ゼ、ジアホラ-ゼを固定化した微小乳酸センサ-を作製し、その特性を調べることにより、微量分析法の開発を実施した。
鈴木博士(東大先端研)は、ブライシュバイク工科大学、リヨン大学、コンピエ-ヌ工科大学を訪問し、研究討議を行い、共同研究の可能性について話し合った。ブラウンシュバイク工科大学では印刷技術を利用した集積型マイクロバイオセンサ-の研究を行っているが、このような集積型バイオセンサ-では 所定の箇所のみ何種類かの酵素を固定化する必要がある。この目的のため鈴木らが行っている光架橋性ポリマ-を利用した酵素固定化法は適しており、共同研究の可能性を議論した。リヨン大学では酵素溶液に浸すだけで共同結合できる膜を利用している。この方法はきわめて簡単に酵素を均一に固定化できる。この材料をマイクロサンセ-に適用する方法について検討した。コンピエ-ヌ大学では酵素固定化技術全般の日仏両国の研究の現状について情報を交換し、共同研究性を議論した。
久保助教授(創価大)は、コンピエ-ヌ工科大学、ペルピニアン大学、を訪問した。コンピエ-ヌ工科大学のト-マス教授の研究室では、バイオセンサ-やバイオリアクタ-などの研究を中心に行っている。組み換え菌を利用したバイオリアクタ-については、かなり精力的に研究が進められており、制御技術としてバイオセンサ-の利用がきわめて重要と考えられた。また、ペルビニアン大学のマ-ティ教授の研究室では、農薬計測用バイオセンサ-の開発が行われている。とくにマ-ティ教授は農薬測定用の酵素とCO_2センサ-を必要としており、日本側からは、これらを供給できるため、今後この方面で共同研究をすすめていくことを話し合った。
関博士(創価大)はリヨン大学のク-レ教授の研究室で共同研究を実施した。リヨン大学のク-レ教授の研究室ではホスト・ゲストケミストリ-、バイオセンサ-、LangmuirーBlodgett膜、に関する研究が行われている。特に、リン酸計測用バイオセンサ-、アセチルコリン計測用バイオセンサ、及び光ファイバ-を用いたH_2O_2、ATPおよびNAD(P)計測用バイセンサ-については精力的に研究が進められている。また、LangmuirーBlodgett(LB)膜を用いる酵素固定化法をバイセンサ-に応用するため、LB膜を作製するための基礎的研究が進められている。そこで関は日本からISFETを持参し、ク-レ教授の研究室でISFET上にベヘン酸(CH_3(CH_2) ^<20>COOH)のLB膜を垂直浸漬を用いて形成する実験を行い、特性を検討した。今後、LB膜を作製する技術に関する情報交換を行うことは、マイクロバイオセンサ-の開発において有効と考えられた。
研究協力者として佐藤助教授(神奈川工大)、梶原助教授(西東京科学大)はそれぞれコンピエ-ヌ大学、ポ-ルサバチエ大学及びペルピニアン大学に訪問滞在し、熱計測型バイオセンサ-に関する共同研究のための調査を実施した。
軽部(東大先端研)は、コンピエ-ヌ工科大、ブライシュ工科大を訪問し、ト-マス教授、シュミット教授と研究討論を行い、本プロジェクトを遂行するための問題点の整理を行うと共に、今後も本共同研究プロジェクトを継続すべきであるとの研究総括を行った。

研究成果

• [文献書誌] S.M.Chang,Y.Iwasaki,M.Suzuki,E.Tamiya,I.Karube: "Detection of odorants using an array of piezoolectric crystals and neural-network pattern recognition" Anal.Chim.Acta. 249. 323-329 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] E.Tamiya,Y.Sugiura,S.Mizoshita,K.Nakajima,A.Akiyama,I.Karube: "Ultramicro-acetylcholine sensor based on an enzyme-modrfied carbon fibre electodl" Anal.Chim.Acta. 251. 129-134 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] S.Lee,M.Suzuki,E.Tamiya,I.Karube: "Microbial detection of toxic compounds utilizing recombinant DNA technology and biolaiuinesceuce" Anal.Chim.Acta. 244. 201-206 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Yokoyama,E.Tamiya,I.Karube: "Amperometric glucose sensor using silicon oxide deposited gold electrodes" Electroanalysis. 3. 469-475 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Izumi Kubo,Masako Inagawa,Takako Sugawara,Yoshiko Arikawa,Isao Karube: "Phosphate sensor composed from immobilized pyruvate oxidase and an oxygen electrode" Anal.Letters. 24. 1711-1727 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Atsushi Seki,Eiichi Tamiya,Isao Karube: "Amplification immunoassay for the determination of Hepatitis B surface autigen" Appl.Biochem.Biotech.27. 259-265 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 軽部 征夫: "バイオのはなし" 日本実業出版社, 241 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 軽部 征夫: "バイオエレクトロニクスの未来" NTT出版, 226 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] S. M. Chang, Y. Iwasaki, M. Suzuki, E. Tamiya, I. Karube: "Detection of odorants using an array of piezoelectric crystals and neural-network pattern recognition" Anal. Chim. Acta. 249. 323-329 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] E. Tamiya, Y. Sugiura, S. Mizoshita, K. Nakajima, A. Akiyama, I. Karube: "Ultramicro-acetylcholine sensor based on an enzyme-modified carbon fibre electrode" Anal. Chim. Acta. 251. 129-134 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] S. Lee, M. Suzuki, E. Tamiya, I. Karube: "Microbial detection of toxic compounds utilizing recombinant DNA technology and bioluminescnece" Anal. Chim. Acta. 244. 201-206 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K. Yokoyama, E. Tamiya, I. Karube: "Amperometric glucose sensor using silicon oxide deposited gold electrodes" Electroanalysis. 3. 469-475 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] I. Kubo, M. Inagawa, T. Sugawara, Y. Arikawa, I. Karube: "Phosphate sensor composed from immobilized pyruvate oxidase and an oxygen electrode" Anal. Letters. 24. 1711-1727 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] I. Karube: Nihon Jitsugyo Pub.BAIO NO HNASHI (in Japanese), 241 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] I. Karube: NTT. Pub.Baioerekutoronikusu no Mirai (in Japanese), 226 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より