研究課題
国際学術研究
逆転磁場ピンチプラズマの閉じ込め特性を表す重要な指様に、実効抵抗率(n)^*がある。n^*が大きい場合、プラズマ中でのエネルギー散逸が大きく、プラズマの異常加熱が起きる。REPUTE実験装置では、VLQ、ULQ及びRFPの各放電モードについて、このn^*のスケーリング則を調べ、プラズマの異常加熱と異常輸送が磁気揺動によってひき起こされるメカニズムを明らかにした。そのデータ及び理論モデルをパドバ研究所のRFX実験装置のデータと比較・検討した。その結果として(1)プラズマの磁気揺動がイオンの選択的異常加熱を起こすこと(2)その異常加熱パワーはn^*の異常な増分によるエネルギー散逸の増加に対応していること(3)装置の大型化に伴い磁気揺動は小さくなり、n^*は古典値へ近付くこと等が明らかになった。また、所謂ダイナモ効果が、必然的にn^*の増加をもたらし、それは特にプラズマの端部(壁面に近い領域)の電子エネルギー閉じ込め特性に敏感に依存することが指摘された。今後RFPの研究において、プラズマのグローバルな閉じ込め特性を改善する上で、この端部の電子エネルギー閉じ込めの改善が重要である。RFPのプラズマパラメータは、その高温化に伴ない、運動論的効果が重要領域に入りつつあることを指摘した。RFPは磁力線の総合長が比較的短く、従って磁気揺動に対して運動論的効果が重要になりやすい傾向を持つ。本研究では、RFPの高温領域で重要となると考えられる物理現象をリストアップし、各々について理論的な検討を行なった。先ず実験的には(1)高速の非熱平衡電子の観測、(2)イオン・サイクロトロン周波数領域の磁気揺動の観測、(3)イオンの速度分布関数の非等方性の観測、(4)イオンの選択的異常加熱の観測が進められている。これらはいずれも運動論的効果の重要性を示すものである。(1)高速電子の発生については、Kinetic Alfven波の乱流による電子の加速が効いていると考えられる。(2)イオン・サイクロトロン周波数領域の揺動は高速電子がひきおこすion Bernstein波の不安定性、あるいはイオン温度の非等方性(3)によるAlfven ion cyclotron波の不安定性の可能性がある。(4)イオンの異常加熱はキンク不安定性に伴うイオンのtransit-time-dampingによって説明される。RFPプラズマの閉じ込めスケーリング則は、プラズマ電流の増大とともに改善されるので、RFX装置での実験はこのスケーリング則をMAクラスのプラズマにまで外挿する事が大きな目的の一つである。従来RFPプラズマではポロイダルベータ値が常にほぼ一定であり、またIp/N(プラズマ電流/全粒子数)を指標としてスケーリング則を構築してきた。現在までのRFXプラズマ実験では、ポロイダルベータ値の劣化が観測されており、閉じ込め時間も従来のスケーリング則からの外挿値より悪い。その原因として、内壁全面をロ-ボンタクルで覆っており、この壁コンヂショニングが不十分である、プラズマ制御が最適化されていない、シェルギャップ等での誤差磁場が完全に補償されていない等の点が挙げられる。現在は、よりよい閉じ込め特性を達成し閉じ込めスケーリング則の実験的検証に向けて、上述の問題点を改良する方向で研究がすすんでいる。
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