中国西北地域における砂漠化防止に関する基礎的研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03044049
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 春原 亘 東京大学, 農学部, 教授 (60011954)
• 研究分担者: 崔 書紅 中国科学院, 蘭州沙漠研究所, 助理研究員 ; 宝音 烏力吉 中国科学院, 蘭州沙漠研究所, 副研究員 ; 王 涛 中国科学院, 蘭州沙漠研究所, 副研究員 ; 劉 忠民 中国科学院, 西北水土保持研究所, 高級実験師 ; 鄒 厚遠 中国科学院, 西北水土保持研究所, 副研究員 ; 陳 国良 中国科学院, 西北水土保持研究所, 研究員 ; 山 侖 中国科学院, 西北水土保持研究所, 研究員 ; 本江 昭夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 助手 (30091549) ; 高橋 英紀 北海道大学, 大学院・環境科学研究科, 助教授 (20001472) ; 稲永 忍 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 助教授 (40124664) ; 一前 宣正 宇都宮大学, 雑草科学研究センター, 教授 (50008067) ; 武田 和義 岡山大学, 資源生物科学研究所, 教授 (90003516) ; 田村 三郎 東京大学, 名誉教授 (50011771)
• キーワード: 黄土高原 / 緑化 / 土壌侵食 / 半乾燥地 / 砂漠化 / 過放牧 / 耐干性植物 / 土壌のクラスト形成

研究概要

中国西北地域に拡がる広大な半乾燥地では、人口圧に起因する傾斜地の開墾と羊の過放牧により、植生の破壊とそれに伴う土壌侵食が激化して、急速に砂漠化が進行している。本研究は、荒廃した植生を復活させるという生物的手法を中心にして、砂漠化防止を図るものであり、本年度の成果は以下の通りである。
1.雑草選抜:傾斜草地の植生改良のために、在来種と導入種の現地適応性を調査し、生育・繁震のうえから4科22種の優良種を選抜した。今後草地改良の実験をこれらの草種を用いる。
2.草地放牧:草地植生を荒廃させる原因となっている周年放牧を中止し、夏季放牧に変える基礎デ-タを得るために、放牧圧と植生の変化の関係を明らかにした。すなわち、放牧強度が強まる程地表の有機物の蓄積は少なくなり、裸地化が進んで、裸地部分には土壌クラストが形成され、土壌の貫入抵抗が大きくなった。この土壌構造への影響が水収支を悪化させ、採食による地上部の損傷も加わって、荒廃が進んだと推察された。
3.耕地:傾斜地耕地を草地へ転換した場合、食用作物の生産量を確保するには、平坦地耕地の単収の増大が必須となる。単収増大を目標に、本年度は、(1)導入小麦品種の選抜、菜種の集団育種を継続した。(2)肥料3要素試験を実施してP>N>Kの順に肥効が高いことを確認した。(3)天水条件下での小麦の最大生産力を知るために、圃場試験を実施し、多肥、深耕、マルチの効果を明らかにした。(4)小麦の生育段階別の水の効果を知るため、時期別少量潅水試験を行い、節間伸長期に効果が大きいことを明らかにした。
4.気象:土地利用計画の策定のために、地形要素、環境条件を数値化してモデルを構築し、地域内の任意の地点での熱収支を算して、気温・地温・蒸発散・土壌水分を把握する初歩的モデルの検討を行った。

研究成果

• [文献書誌] 春原 亘: "中国黄土高原における農作業体系 1.黄土高原の概況と調査対象" 農作業研究. 26(1). 25-32 (1991)
• [文献書誌] 春原 亘: "中国黄土高原における農作業体系 2.コムギ作農作業体系" 農作業研究. 26(1). 33-41 (1991)
• [文献書誌] 春原 亘: "中国黄土高原における農作業体系 3.アマ、キビ、エンドウ作の農作業体系" 農作業研究.
• [文献書誌] 春原 亘: "中国黄土高原における農作業体系 4.平均的農家の年間労働時間配分の推定" 農作業研究.
• [文献書誌] 田村 三郎: "中国黄土高原に再び緑を" 植物細胞工学. 3(4). 52-56 (1991)
• [文献書誌] 一前 宣正: "砂漠化防止のための野生植物による緑化の試み" 植物の化学調節. 26(2). 214-216 (1991)
• [文献書誌] 一前 宣正: "野生植物による砂漠化防止の試み" 農薬科学シンポジウム講演要旨集. 59-71 (1991)
• [文献書誌] 一前 宣正: "中国黄土高原の砂漠化防止に関わる研究ーー緑化植物の選抜と導入" 雑草研究. 36(別1). 146-147 (1990)
• [文献書誌] 武田 和義: "中国黄土高原におけるムギ類の育種" 育種学雑誌. 40(別1). 270-271 (1990)
• [文献書誌] 武田 和義: "Effects of osmotic and salt stress on the accumulation of polyamines in leaf segments from wheat vareties differing in salt and drought tolerance." J.Plant Physiol.137. 165-168 (1990)
• [文献書誌] 武田 和義: "作物における水ストレス耐性の遺伝変異" 資源生物科学シンポジウム報告. 9-14
• [文献書誌] 高橋 英紀: "Estimate of the beat balance on the slopes of the hilly land in the Loess Plateau." Environmental change and CIS. 2. 79-87 (1991)