研究分担者 |
R.A. スイン インド国立中央諸語研究所, 準教授
B.B. ラージャプロヒ インド国立中央諸語研究所, 教授
町田 和彦 東京外国語大学外国語学部, 助教授 (70134749)
内田 紀彦 園田学園女子大学文学部, 教授 (70168699)
薮 司郎 大阪外国語大学外国語学部, 教授 (30014509)
溝上 富夫 大阪外国語大学外国語学部, 教授 (60030152)
坂本 恭章 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30014468)
SINGH R.A Associate Professor, CIIL, Ministry of Human Resources, Mysore
RAJAPUROHIT B.B Professor, CIIL, Ministry of Human Resources, Mysore
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研究概要 |
1.研究目的とそれを達成するための計画方法 南アジア地域で話される主要言語のうち,インド・アーリア系のアッサム語・グジャラート語・スィンディー語・ウルドゥー語,ドラヴィダ系のマラヤーラム語,チベット・ビルマ系のケザ・ナガの6言語について調査研究を行い,母語使用者との面接を通して収録する口語資料と現地語で書かれた教科書より採集する文語資料の両方を電算機に入力し,それらを電算処理することによって頻度数と文脈提示の単語リストを作成する。また本研究所発行の「アジア・アフリカ諸語言語調査票」を基に作成した「南アジア諸語基本語彙調査票」を使い,上記6対象言語の各々約2,000にのぼる基本単語につき,発音(国際音声字母による表記)と文法事項(品詞,曲用・活用の種類など)を記述し,さらに当該単語を含む文例を添付する。これら頻度数・文脈付単語リストと基本語彙集をデータベースとして活用し,将来対象言語それぞれの辞書・文法書・言語研修書等の作成が可能になるような検索・編集・印刷用電算プログラムを開発する。なお本研究が,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所とインド国人的資源省直轄・インド諸語中央研究所との日印両国にまたがる国際的共同研究である事を考え,データの補正・交換・電算処理が今後両国間で支障なく行われるよう,共通の入力フォーマットを設定し,異種ウェア間のコード転換プログラムの導入により入力データの互換性を確立する。 2.研究の成果と達成度 対象6言語それぞれの口語資料と文語資料を収集し,それらのデータを基本語彙集とともにすべて電算機に入力した。また基本語彙集のすべての単語の発音を録音テープに収録した。さらにアッサム語・グジャラート語・マラヤーラム語それぞれの文字フォントと原字による単語の辞書順配立を可能にするパラメータを作成した。このことは,それぞれの言語の固有文字で書かれた全ての言語資料が,ローマに転写することなくそのままの形で電算処理できるようになったことを意味し,当該言語の研究史上正に画期的な出来事といえよう。なお,文字フォントの印刷用ソフトウェアの開発により,インド系文字・ローマ字・国際音声字母・日本語漢字仮名混じり文字等をすべて電算機の同一画面に表示したり,そのまま紙に印刷したりするDTP方式が可能になった。 初年(平成3年)度には,インドの民間会社が開発したワープロ用ソフトウェアを使って入力したデータを,コード転換することによって本研究所の大型電算機が処理できる形に変えていたが,今年度に入り,インド政府の定めた統一規格に基づくGISTという入力ソフトが開発されたため,それによる入力データもコード転換する必要が生じた。しかし最大の問題は,インドの民間会社の入力ソフトもGISTも,共にパソコンないしワープロを使ってデータを入力させることはできても入力データを電算処理できないところにある。従って,このままの状態でいけば,インドにおける電算機利用の言語研究は本研究所の大型電算機に永久に依存せざるを得ないということになる。またもう一つの深刻な問題は,GISTで入力したデータとそれ以外のソフトで入力したデータの間には全く互換性が無いと言うことである。そこでこの2つの重大な問題を解決するために,町田共同研究員の開発したパソコン用の電算処理ソフトCATUR(インド系文字・ローマ字相互転換処理方式)を導入し,今までに大型電算機でやってきたデータ処理をすべてパソコンでできるようにしたし,またインド国内のいかなるソフトを使った入力データもCATURのコードに転換することで他のいかなる入力データとも互換性を持ちうるようなシステムを開発した。これはインド側に対する日本側の目ざましい貢献の一つと言っていいであろう。 しかし,本研究の当初計画した目的がすべて達成されたわけではなく,スィンディー語・ウルドゥー語の文字フオントや電算処理に必要なパラメーターはまだ未完成であり,かつ対象6言語相互間の比較・対照研究も国内で開発された2回のワークショップで試みられたものの,充分に議論し尽くされておらず継続研究が望まれる。
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