機能性ブロック共重合体の表面構造とその動的挙動

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03044059
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 中浜 精一 東京工業大学, 工学部, 教授 (90016410)
• 研究分担者: DAVID G Cast ワシントン大学, 化学工学科, 教授 ; BUDDY D Ratn ワシントン大学, 化学工学科, 教授 ; 平尾 明 東京工業大学, 工学部, 助教授 (00111659)
• キーワード: 親水性・疎水性ブロック共重合体 / 表面構造 / アニオンリビング重合 / 接触角 / 電子顕微鏡観察 / XPS / 表面再構築 / SIMS

研究概要

親水性・疎水性ブロック共重合体の設計と合成および表面の接触角測定、TEM観察、およびXPS測定を日本側でおこない、アメリカ側では同試料を用いて主としてXPSとSIMによる表面構造解析をおこなった。ポリ(スチレン-b-2ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA))、ポリ(オクチルスチレン-b-HEMA)、およびポリ(イソプレン-b-HEMA)について、特に、表面の断面TEM像の観察を中心に表面構造の解析をおこなった。ポリ(イソプレン-b-HEMA)では湿潤時にはPHEMAドメインが、乾燥時にはポリイソプレンがその最表面を覆っていることが明瞭に観察された。しかし、乾燥時に加熱処理をおこなう水中に侵漬しても容易にはPHEMAドメインによる表面の再構築がおこらないことも明かになった。これは水で濡らした時の表面の再構築が表面ポリイソプレンドメイン中に含のれる少量のPHEMA(加熱処理によりこの量はさらに減少すると考えられる。)のチャンネルを通じて下層にあるPHEMASドメインへ水が流れ込み最表面層の入れ替わりがおこることを示唆するもので、興味深い研究成果である。これらのブロック共重合体に加えて新たにポリ(スチレン-b-2,3ジヒドロキシプロピルメタクリレート(DIMA))を合成しそのVPO,GPC,NMR測定などにより一次構造の解析をおこない、設計どおりのブロック共重合体が合成できたことを明かにした。基本的にはPHEMAを含むブロック共重合体と同様に湿潤時には最表面がPDIMAドメインで履われ、乾燥時にはポリスチレンドメインが入り替わって表面に出ることがXPS測定、接触角測定、およびTEM観察から明かになった。さらに、PDIMA表面はPHEMAのそれに比べて親水性が高いこと、表面の再構築の速度が遅く、一旦、水で濡れた最表面は加熱乾燥しない限り長時間親水性を維持し続けることなどが特徴である。

研究成果

• [文献書誌] D.G.Castner, B.D.Ratner, D.W.Grainger,S.W.Kim, T.OKANO, K.SUZUKI, D.Briggs,and S.NAKAHAMA: "Surface characterization of 2-hydroxyethyl methacrylate/styrene copolymers by angle-dependent X-ray photoelectron spectroscopy and static secondary ion mass spectrometry" J. Biomater. Sci. Polymer Edn,. 3. 463-480 (1992)
• [文献書誌] C.NOJIRI, T.OKANO, H.KOYANAGI, S.NAKAHAMA, K.D.Park. S.W.Kim: "In vivo protein adsorption on polymers:visualization of adsorbed proteins on vascular implants in dogs" J. Biomater. Sci. Polymer Edn,. 4. 75-88 (1992)
• [文献書誌] K.IWASAKI, T.TOKIWA A.HIRAO, S.NAKAHAMA: "Morphology of Blends of Poly(3-(2-Propenyl)aniline-b-3-(2-Propenyl)aniline)with α,ω-Dicarboxy Poly-(ethylene oxide)" Niw Polymeric Materials. (1993)
• [文献書誌] K.IWASAKI A.HIRAO S.NAKAHAMA: "Morphology of blends of α,ω-diamino polystyrene with α,ω-dicarboxy poly(ethylene oxide)" Macromolecules. 26. (1993)
• [文献書誌] T.ISHIZONE, J.TSUCHIYA, A.HIRAO, S.NAKAHAMA: "Anionic Polymerization of Monomers Containing Functional Groups.4.Anionic Living Polymerization of N,N-Dialkyl-4-vinylbenzenesulfonamides" Macromolecules. 25. 4840-4847 (1992)
• [文献書誌] A. HIRAO S. NAKAHAMA: "Anionic Living Polymerization of Monomers with Functional Silyl Groups" Prog. Polym. Sci.,. 17. 283-317 (1992)
• [文献書誌] 中浜 精一 他共著: "高分子機能材料シリーズ1 高分子の分成と反応(1)" 共立出版, 554 (1992)
• [文献書誌] 中浜 精一 他共著: "第4版 実験化学講座 28巻 高分子合成" 丸善, 487 (1992)