研究課題
1.チトクロムc_3固体膜の光物性と電気伝導:完全酸化型チトクロムc_3固体膜に対する無端子法ホ-ル効果測定を試みたところ、磁場によるマイクロ波共鳴反射の変化は検出限界以下であり、従来報告されていた値よりもホ-ル移動度が小さいことが示唆された。高感度電気伝導度測定装置を用いた測定により、完全酸化型固体膜の抵抗率は真空中で10^<13>Ωcmであり、また、白色光照射により企可逆的に減少することがわかった。本年度の共同研究で光電気物性を精密に測定するための準備を進めたので、来年度は、生物素子の材料としてのチトクロムc_3固体薄膜の特性を更に精査する計画であり、現在、日独双方で準備を進めている。2.NMRによるチトクロムc_3の電子移動過程の研究:既に報告したチトクロムc_3(宮崎株)の微視的酸化還元電位が、結晶構造上のどのヘムに帰属されるかをプロトンNMRを用いて決定した。その結果、ヘムの露出度が大きいものほど酸化還元電位が低くなること、協同的なヘム間相互作用が観測されたヘムは結晶構造でのヘムIII、IVにあたり、鉄間距離が最も近く、しかも特異な相互配置を持っていることが明らかになった。今後、NMRによって得られる物理化学的な情報を精確な構造情報に基づいて解析していくことが可能となった。3.分光電気化学的手法による単分子吸着層のキャラクタリゼ-ション:カルボキシル基を持つ電極表面修飾剤はチトクロムc_3(ギガス株)を強く固定化すること、および表面修飾によりチトクロムc_3の酸化還元電位を制御する作用があることが紫外可視反射分光法(ER)測定から示唆された。さらに、チトクロム、および光合成細菌の光中心の単分子吸着層の構造と電子授受反応の解析をER、表面増強ラマン分光法(SERS)を用いて進める計画である。
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