研究分担者 |
DANIELE MEUL Universite Libre de Bruxelles, Department, 教授
WOLFGANG DAU Univestat Bremen, Justiz, 教授
BERNARD CASE Policy Studies Institute, 上級研究員
A. GAUVIN Universite de Paris I, Seminaire d′Econom, 教授
伍賀 一道 金沢大学, 経済学部, 教授 (20104870)
加藤 佑治 専修大学, 経済学部, 教授 (40083513)
DAUBLER Wolfgang Univestat Bremen, Justiz, Professor
MEULDERS Daniele Universite Libre de Bruxelles, Department d' Economie Appliquee, Profeeur
CASEY Bernard Policy Studies Instisute, Senior Research Fellow
GAUVIN A. Universide de Paris I, Seminaire d' Economie du Travail Professeur
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研究概要 |
就業形態の弾力化について日欧4カ国とも,次のように共通する特徴をみてとることができる。 まず,パートタイムをはじめ期限つき労働契約,人材派遣さらには下請化などの就業形態の弾力化が,年をおって進んでいる。そうした就業形態のもとで働く人々の実数および労働力総数にしめる比率とも増加している。また,今後とも増え続けるであろうとする予測も,各国で確認される。その背景としては,国際間競争の強まりやサービス経済化の進展,女性の労働力率の上昇とならんで失業の増加が.指摘される。 第2に,就業形態の弾力化に対する法や協約による対応が,各国で模索されている。西欧3カ国では,国内批判の整備が検討されており,また,パートタイム,期限つき労働契約,人材派遣,下請に関するEC指令案の採択とこれをめぐる議論などをあげることができる。人材派遣の禁止されているイタリア,スペインの2カ国ならびに法的には認知されているものの他のEC加盟国なかんづくイギリスと較べると数段きびしい規制をとるドイツの制度について,それぞれ禁止の解除もしくは制度の弾力化を求める意見が強まりをみせている。こうしたことを含めて政策的な対応が.各国で模索されている。 第3に,人材派遣企業の規模格差が大きく,その最低辺には不法入国者を含む外国人労働力を利用する人材派遣企業が位置する。規模格差は,とりわけ法的規制のよわいイギリスにおいて顕著であり,企業の集中化傾向の進展とともに,各国において認められる。小零細の人材派遣企業は,西欧3カ国についていえば旧東欧諸国からの流入外国人の利用をその存立基盤にする。 第4に,弾力化された就業形態のもとにある労働者の交渉力の形成は,きわめて困難である。これは,4カ国に共通し,とりわけ期限つきの労働契約と人材派遣について強い。労働組合による組織化と交渉力形成にむけた努力が,各国でおこなわれ古いものでは20年以上の歴史をもっている。しかし,時間をかければおのずと進むというほど容易ではなく,労働組合の全般的な影響力の低下要因となっている。 就業形態の弾力化については,特にわが国を念頭におくとき次のような相違もある。 まず,法や協約による対応をみるとフランスとドイツについては,正規労働者と弾力的な就業形態のもとにある労働者との賃金・労働条件の同一性を内容にするのに対して,わが国では,そうした原則をもっていない。独仏両国の対応は,すでにふれたEC指令案の内容でもある。日本の対応は,賃金・労働条件の格差が国際的にみても大きいという基盤のもとで出されたものであり,また,そうした政策対応は,格差を温存する効果をもつといえる。 第2に,一社専属の人材派遣は,西欧3カ国にはみられずわが国独自のものである。これは,わが国の系列ともかかわりをもつ。もとより一社専属の人材派遣(in Rouse)は,アメリカの病院などに広く認めらるれことであり,これを含めた特徴の正確な分析が必要である。ともあれ,西欧3カ国にはみることができない。 第3に,弾力的な就業形態のもとにある労働者の賃金・労働条件は,正規労働者と較べてはもとより彼らの内部でも大きな格差をもつ。これは,西欧3カ国になかで比較的ゆるやかな規制をとるイギリスに較べても,いいうることである。 本年度の作業のなかでなお残された問題もある。そのひとつは,アメリカにある一社専属の人材派遣がなぜ西欧にはないのか,ということである。なぜなら,西欧の人材派遣は,そのルーツをアメリカにもつからである。いまひとつは,多様な就業形態を底辺で担う不法入国外国人の労働市場については,十分な実証的うらづけをとりえていない。これは,4カ国すべてにいえることである。すでにつかんでいる10数例とこれをふくめたいっそうの実証を要する。最後に,女性労働論の成果をこの分野にもいかさなければならないことである。多様な就業形態における雇用保障の有無ほかの分析に終るわけにはいかないように,考えられる。
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