研究分担者 |
田崎 誠司 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (40197348)
海老沢 徹 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (30027453)
川端 祐司 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (00224840)
FANJAT Norbe 京都大学, 化学研究所, 特別研究員
金谷 利治 京都大学, 化学研究所, 助教授 (20152788)
梶 慶輔 京都大学, 化学研究所, 教授 (00026072)
好村 滋洋 広島大学, 総合科学部, 教授 (50034583)
DREXEL Winfr ラウェ, ランジュバン研究所(フランス国), 主任研究員
STEYERL Albe ロードアイランド大学, 物理学科(アメリカ合衆国), 教授
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研究概要 |
超冷中性子重力分光器の特徴は、散乱過程における遷移エネルギ-及び遷移運動量の両面において、前者が約10^<-8>eV,後者が約10^<-3>Å^<-1>という超高分解能を有していることである。さらに本研究において用いる落差集束式重力分光器は、フランス国グルノ-ブルのラウェ・ランジュバン研究所において稼動中の飛程集束式重力分光器が散乱角45度の測定のみが可能であるのに比して、多数の散乱角についての測定が同時に行えることである。従って本研究の重力分光器性能比較にあたっては、これらの特性の活用に適した散乱試料の調査検討が重要であり、これをまず本年の研究目標の1つとした。次に、従来の超高分解能中性子分光器として、スピンエコ-分光器があり、遷移エネルギ-の分解能としては重力分光器と同程度の10^<-7>〜10^<-8>eVの性能が達成されつつあるが、スピンエコ-法は散乱試料における動的過程を時間軸により観測することにより適した特質を有しているのに比して、重力分光器は直接エネルギ-遷移を観測することが容易な特質を有する。最近,このスピンエコ-分光法に小角散乱の手法を組み合われて小角スピンエコ-分光器を開発し、遷移エネルギ-と遷移運動量の両面で重力分光器と同程度の超高分解能を達成しようという研究開発が始められている。そこで本研究の今年度の調査検討項目には、この小角スピンエコ-分光法に比して超冷中性子重力分光法の特徴の一端を明らかにする研究も開始することにした。 フランス国グルノ-ブルのラウェ・ランジュバン研究所における中性子散乱研究施設,特にその飛程集束式重力分光器の性能及び各種特性に関する調査検討と,関連研究者等との研究討議及び情報交換とこれらの分析検討を中心に,さらに他の関連研究所及び研究施設についての情報集収と討議等を行うとともに,これら超高分解能中性子散乱実験を各種の散乱実験試料に適用した際に得られると考えられる散乱特性情報についての解析等についても,種々の代表的散乱試料に関する検討を試みた。まず,我々の落差集束式重力分光器が複数の散乱角に関する測定結果を一度に得られることは極めて重要な特長であり、例えば高分子溶液系等における拡散効果によるエネルギ-分散について複数の運動量遷移の結果によって従来より精密でかつより信頼度の高い動的パラメ-タを導出できる可能性のあることが示され,次に当重力分光器の小角スピンエコ-分光法との比較特徴の事については、スピンエコ-法が冷中性子を用いるのに比して当分光器では超冷中性子を用いていることから、試料における中性子散乱過程において、超冷中性子の極めて顕著な中性子光学的現象という特質から、重力分光器においてはそれ特有の動的情報がもたらされると期待されることが明らかとなった。 このようにして得られた,落差集束式超冷中性子重力分光器の特性と性能の特徴に関する知見は、これから開始する同重力分光器の中性子散乱応用実験において,散乱試料の遷定とその結果の解析において極めて有益な指針を提供する。
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