研究分担者 |
J. Nothby ロードアイランド大学, 工学部, 教授
Y. Kuk AT&Tベル研究所, 金属誘電体薄膜研究部, 研究員
M. Sosnowski ニュージャージー工科大学, 電気工学科, 教授
W.L. Brown AT&Tベル研究所, 金属誘電体薄膜研究部, 部長
高岡 義寛 京都大学, 工学部, 助教授 (90135525)
WALTER L. Brown This Film Metal and Dielectric Research Department, AT & T Bell Laboratories, De
USUI Hiroaki Faculty of Engineering, Tokyo University of Agr. and Tech., Associate Professor
YOUNG Kuk Department of Physics, Seoul National University, Professor
JAN Northby Department of Physics, Univ. of Rhode Island, Professor
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研究概要 |
京都大学工学部附属イオン工学実験施設においてクラスターイオンヒーム(ICB)技術を開発した。本技術をさらに究めるため,数年前より国際的規模で研究をおこなっている。現在はベル研究所,イリノイ大学,フロリダ大学,カリフォルニ大学など22以上の研究所や大学で,基礎から応用に至るまで幅広い研究を行っている。今回さらに研究を効果的におこなうため本国際学術研究チームを結成し,平成3年度,および4年度の2年間にわたって研究をおこなった。本研究ではベル研究所,ニュージャージ工科大学,ロートアイランド大学を拠点研究機関として緊密な国際交流を行い,我国が開発したクラスターイオンビーム技術の基礎研究をおこなった。本研究で得られた成果を以下にまとめる。 (平成3年度の成果) (1)発生したクラスターイオンビームの特性を解析するためベル研究所のブラウン博士,ニュージャージ工科大学のソスノウスキー教授等を中心に共同研究をおこなった。クラスターイオンビームを光イオン化飛行時間測定装置を用いて詳細に分析し,本結果から少量のクラスターでも薄膜形成の核形成プロセスに大きな影響を与えることを明らかにした。また走査トンネル顕微鏡(STM)観察を通して格子定数の差の大きい組み合わせでおこる超整合エビタキシャル効果についても新しい知見を得た。 (2)クラスタービームの基礎現象を明確にするためにロードアイランド大学のノースビー教授を中心に共同研究を行った。本研究では,クラスターイオンビームの発生,固体の照射現象を明らかにするためにカスクラスタービームを形成しておこなった。この結果クラスターイオンビームの発生メカニズムが明らかになり,極低エネルギーイオンビームの発生を確かめた。また固体衝突時のモーメンタム変換が極めて効果的におこり,ラテラルスパッター効果等の新現象を実験的に確認し,応用上極めて重要であることを明らかにした。これは,原子レベルの超平坦表面形成,無損傷表面クリーニンクなどに役立ち,工学応用に極めて有効であることも分った。 (平成4年度の成果) (1)単原子状やクラスター状のイオンビームを用いた薄膜形成プロセスを原子レベルで精度よく観測して究明するために,超高真空型STM装置を整備しておこなった。具体的には,金やアルミニュームなどの金属イオンビームを原子的清浄表面をもつシリコンなどの基板上に照射して,薄膜形成初期過程を観察し,クラスターイオンビームの作用が単原子ビームの場合と異なることを明らかにした。 (2)クラスタービームの照射効果における基礎現象を明らかにするために,クラスタービームの薄膜堆積効果とイオン照射効果を分離しておこなうためにガスソースクラスタービーム装置を製作しておこなった。この結果,低エネルギー効果,多体衝突効果など諸データーを実験的に求めた。また分子動力学法による計算機実験によって衝突のメガニズムを明らかにし,実験とよい対比を得た。 (3)研究成果(2)をさらに発展させ質量分離したガスクラスターイオンビームを用い工学的に重要な,無損傷表面クリーニング,高スパッター(単原子イオンの100倍),極薄イオン注入技術などの基礎データーを得,新たにガスクラスターイオンビームプロセス技術を提案した。 本研究では,ICBの基礎実験を,米国における拠点大学・研究所と密接に交流し,共同研究をおこなった。この結果クラスターイオンビームと固体表面との相互作用の基礎データーから応用に至るクラスターイオンビームプロセスの基礎が明らかになった。さらに次世代技術として有効なガスクラスターイオンビームプロセスを提案した。
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