研究課題
強誘電ポリマ-のβー結晶双極子の配向によって形成される内部電場に注目して、この内部電場による色素の配向制御に基づいた新規な非線形光学材料の分子設計を目的として研究を進めた。強誘電ポリマ-であるフッ化ビニリデン(PVDF)とポリメチルメタクリレ-ト(PMMA)との溶融急冷ブレンドは、80/20のブレンド比で優先的にβーPVDF結晶相をとる。このブレンドポリマ-をホストポリマ-として、エレクトロクロミック性をもち、かつNLO特性を有する4ージメチルアミノー4'ーニトロスチルベン(DANS)を分子分散させた試料を調製した。本年度は、ホストブレンドポリマ-の特性を中心に評価した。すなわち、色素のエレクトロクロミック性を利用した内部電場評価、サ-マルパルス法による分極分布の測定、および第2次高調波発振(SHG)の非線形光学特性を検討した。内部電場は数MV/cmであり、ポ-リング電場と比較して数倍も大きいことが判明した。分極分布の測定の結果、空間電荷の形成によって内部電場が安定化されていることが判明した。このブレンドポリマ-はβーPVDF結晶双極子の非中心対称性に起因してそれ自身で大きなSHG特性を示し、SHG係数はE_i=4.2MV/cmでd_<33>=9.36x10^<ー9>esuと大きな値を示した。内部電場が大きくなるとd_<31>係数は小さくなり、d_<33>係数は大きくなった。d_<33>/d_<31>はブレンド内での結晶双極子の膜厚方向への配向の程度を示し、この値が大きいほどより配向している。その結果、内部電場が大きいほどd_<33>およびd_<33>/d_<31>の比は大きくなることが判明し、次年度に研究予定のNLO色素を導入した系における内部電場によるNLO色素の配向およびそれからの大きなSHG効果が期待できる。
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