研究分担者 |
ABRAHAM Seid カリフォルニア大学サンタクールズ校, 教授
吉田 肇 鳴門教育大学, 第5部, 教授 (10111775)
小林 茂治 佐賀大学, 理工学部, 教授 (00039273)
田村 詔生 岡山大学, 理学部, 助教授 (00025462)
浅井 慎 広島工業大学, 電気工学科, 講師 (40192926)
杉本 章二郎 東京大学原子核研究所, 教授 (20044753)
瀧田 正人 大阪大学, 理学部, 助手 (20202161)
幅 淳二 大阪大学, 理学部, 助手 (60180923)
山中 卓 大阪大学, 理学部, 助教授 (20243157)
SEIDEN Abraham Professor, Institute for Particle Physics, University of California, Santa Cruz
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研究概要 |
米国のSSC(Superconducting Super Collider)研究所での実験に使用する目的で,高放射線環境下で且つ高頻度(>100MHZ)発生事象処理能力のある軌跡測定器:(1)シンチレーションファイバー軌跡測定器(2)薄型の高分解能両面読み出しSSD(半導体)検出器の二種の検出器の開発研究を目標とした。 プラスチックシンチレーションカウンターは本質的に応答特性が速い(発光減衰時間<__〜10ナノ(10^<-8>)秒)と言う特性を持っており,高速計測に適している。軌跡検出器として働かせるためにはファイバー形状にして束ねたものを使用するが,検出したい荷電粒子の通過路長がファイバー直経(目的により30ミクロンから数mm程度)で制限されるため,充分な光量が得難く,またファイバーサイズに見合った多チャンネル読み出しが困難という難点がある。平成3年度は将来的興味もあり,30ミクロン直径のシンチレーションファイバー検出器の使用可能性をテストした。PMP(-phenyl-3-mesityl- 2-pyrazoline)と呼ばれる新しい波長変換剤を添加したシンチレーション検出器は,充分な発光量を持ち使用可能である事を検証したが,束ねたときのクロストーク(相互干渉)が課題として残った。また,こうした高密度集積検出体の読みだしには,我々はイメージインテンシファイヤー増幅した後,CCDで読み出すという手法を取ったが,CCDのクリアーには少なくも1マイクロ(10^<-6>)秒を要するので,100MHZの高速で事象の発生するSSC実験に使用する為には前段処理の工夫が必要である。この時点で,SDC測定器(我々の参加しているSSC実験グループ)中間部軌跡検出器としては,軌跡分解能1mmを目指すと仕様が固まったので,重点をSSD検出器開発に移した。 SSD検出器はSDC測定器の中心部,内径9cmから50cmの所に円筒状に置かれ,ビーム反応点(ヴァーテックス)から飛来する荷電粒子の軌跡を高精度で測定し,ヴァーテックスの測定,運動量の精密決定,パターン認識,またカロリーメーター(シャワーエネルギー測定器)と組み合わせて粒子同定に用いるなど,SDC測定器の枢要な部分を担う。その為,表裏に50ミクロンピッチでマイクロストリップセンサーを並べた(片面640チャンネル)両面シリコンストリップ検出器(3.4cm×6cm,厚さ300ミクロン)を4枚梯子状に並べたものをシリンダー状に組み上げる構造にした。所定の精度を出し,多重散乱による分解能劣化を避けるため薄型にする必要があり,ビームに近く位置することから,高耐放射線性の高速両面読みだしの能力が要求される。センサーの開発製造は日本で,読みだしは米側で分担し,支持冷却構造等は両方で開発を進めた。 両面半導体検出器はn型基盤の片面にp型のシリコンストリップを形成し,裏面にn型のストリップをp型と斜交するように配置する。試行錯誤で何回かのテストセンサーを試作し,筑波の高エネルギー物理学研究所や阪大核物理センターのビームを使ってテストした。p型ストリップからの読みだしは基本的には片面読みだしのものと同じであり,理想に近い分解能が比較的早期に得られたが,n型からの読みだしにはクロストークがあったのを,n型ストリップの間にp型ストリップを形成しバイアス電圧を充分掛けてやる事で解決する事が出来た。放射線損傷に付いても何回かのテストで,耐放射線性の強い電極構造や素材2付いて改良が試みられ,ほぼ満足の得られる結果(>10^6rad照射に耐える)を得た。 結論:5年以上に亙る開発研究であったが,この科研費を得た最後の2年間で位置分解能〜15ミクロン,耐放射線性能もSDC仕様をほぼ充たす両面シリコンストリップ検出器の開発,仕様決定に成功した。
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