研究分担者 |
HASS M ワイツマン研究所, 教授
REIF R ドレスデン工大, 教授
TRAUTMANN W GSI, 研究員
MUNZENBERG G GSI, 主任研究員
LYNEN U GSI, 教授
宮武 宇也 大阪大学, 教養部, 助手 (50190799)
板橋 隆久 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (20112071)
藤田 佳孝 大阪大学, 教養部, 助手 (60093457)
下田 正 大阪大学, 教養部, 助教授 (70135656)
HASS.MICHAEL Weizmann Institute of Science
REIF Roland Technical University Dresden
TRAUTMANN Wolfgang GSI
MUNZENBERG Gottfried GSI
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研究概要 |
西独ダルムシュタットの重イオン研究所(GSI)における重イオンシンクロトロン(SIS)からの放射性核ビームを用いて,現在,大阪大学で基礎研究を行っている表記の研究,超流動ヘリウム中において6He,8H,8Liなどの放射性核をもつ不純物イオンがつくる氷球粒子の振舞いの研究を,本格的に発展させる実験研究の準備を遂行した。 超流動ヘリウム中において不純物正イオンは氷球粒子の形をとる。すでに,1959年に発見されたものの電流測定による以外有効な検出法がなく,その後の研究に大きな発展がなかった。今回,βおよびα放射性核をもつイオンの氷球粒子を作ることによってβ線およびα線による個々の氷球粒子の検出法を確立したので,超流動ヘリウムと氷球粒子の物理を発展させるのが本研究の目的である。 GSIにおいて放射性核ビームはSIS完成と同時に使用可能となったので,そのビームを用いてイオン光学的研究を完了した。SISの創りだす軽いイオンのビームをベリリウムなどの軽い標的に導いたときに創りだされる軽い中性子過剰の不安定核ビームの強度は本実験には十分であることが確認された。また,その収束性も非常によい。ただ,問題はヘリウムに打ち込むさいイオンを減速するときに多少収束が悪化することである。この点に関してはもう少し経験を積んで改良する必要がある。 大阪大学核物理研究センターのサイクロトロンを用いて行っている基礎研究は,サイクロトロンの性能のためにビームの種類に大きな制限がある。SISから得られる多種の大強度放射性核ビームを用いることによって実験が飛躍的に高能率となる。SISの計画設計段階から実験計画についてアドバイスを求めらせ,それに応じて放射性核ビームコースが整備できたので,ぜひこの実験を一層発展され,成功に導くよう招待されまた期待されている段階である。 超流動ヘリウム中にα放射性またはβ放射性核を打ち込み,電磁場中におけるそれらのイオンの輸送現象を研究した。イオンの検出には核からのα線またはβ線を用いている。SISが生成する多種のα放射性またはβ放射性核ビームを用いることによって,さらに多種のイオンの輸送現象を調べることができよう。また,氷球粒子は少なくとも300〜400ミリ秒の寿命をもっている。この,測定で得た氷球粒子の寿命は明らかに,ヘリウム中の個々の電子との相互作用によるのでなく,素励起との相互作用によると理解されるに至った。 超流動ヘリウム中ではイオンのまわりに50〜100個のヘリウム原子が誘電分解極によって結びついて氷球粒子が生成されると考えられている。氷球粒子の構造について研究を金属イオンに結合する水素原子が作りだす結晶の構造に対比させることによって,このくらいの原子数になると結晶構造の対称性が極めて高くなることが推測されるに至った。 氷球粒子と超流動ヘリウム中における素励起との相互作用は新しいαおよびβ線検出法によって以前の電流検出法に比して格段に効果よく研究できた。この他にβ放射性原子8Heが超流動ヘリウム中においてどのように振舞うかについても,極めて興味のある実験ができる見通しがついた。 マイナス面も多々あったが,中でもドイツの経済事情の悪化のために研究所の予算が少なくなり,当方の若手研究者の滞在費のGSI負担分が少なくなってしまったことのため,昨年は当方で滞在費を一部捻出せざるを得なかったが,今年度は全額の負担を請われ非常に困った。また,GSI加速器のビーム調整が一時不調になったことから計画に少し遅れが出で,全体の計画実行に遅れが出たことは非常に残念である。
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