研究課題
微傾斜(110)GaAs面上に分子線成長法でGaAsーAlGaAs超格子を成長すると量子細線状の構造が得られる。この量子細線状の構造は分子線成長中に巨大ステップが形成され、この巨大ステップ端の(111)面上と(110)面上とでAlGaAsの組成が異なることに寄因すると考えられる。この巨大ステップの形成機構を調べるため、微傾斜(110)GaAs面上に、GaAs、AlGaAs、AlAsを成長させRHEEDを用いて、ステップ形成過程を観測した。その結果、AlGaAsの場合、約600℃以上の高温では2原子層ステップが、以下の低温では巨大ステップが形成されることが分かった。一方、GaAs、AlAsの場合は温度によらず、常に2原子層ステップが形成され、巨大ステップの形成が混晶の効果であるという新しい知見が得られた。また、(110)、(100)、(111)面をもつ人為的に作製されたメサ構造のある(110)GaAs面上にAlGaAsを成長し、電子線プロ-ブ微小分析法、走査型カソ-ドルミネセンス法で調べた結果、AlGaAsの組成に面方位依存性があることが判明した。これ等の結果から、この現象を用いて量子細線構造の作製が可能であると考えられる。ベルリン工科大学にある走査型カソ-ドルミネセンス法については量子細線構造を評価するために、空間分解能を向上する必要があり、そのため装置の改造を行い、画像処理のための新しいソフトの開発を行った。この装置を用いて予備的な試料で空間分解能の向上を確認した。さらに走査型トンネル顕微鏡については、超高真空チャンバ-を用意し、表面の原子が観察できるまでに準備を整え、量子細線構造の観察が可能となった。
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