研究分担者 |
浴野 稔一 広島大学総合科学部, 助手 (40185103)
鈴木 孝至 広島大学, 理学部, 助手 (00192617)
佐藤 憲昭 東北大学, 理学部, 助手 (30170773)
小松原 武美 東北大学, 理学部, 教授 (80004331)
桜井 醇児 富山大学, 理学部, 教授 (30033814)
藤田 敏三 広島大学, 理学部, 教授 (20004369)
高畠 敏郎 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40171540)
V Sechovsky チェコ, チャールズ大学金属物理学科, 教授
A De Visser オランダ, アムステルダム大学ファン・デル・ワールス研究所, 研究員
J J M Franse オランダ, アムステルダム大学・自然科学研究所, 教授
J A Mydosh オランダ, ライデン大学カメリン・オンネス研究所, 教授
A A Menovsky オランダ, アムステルダム大学・自然科学研究所, 教授
SATOH N Faculty of Science, Tohoku Univ.
SAKURAI J Faculty of Science, Toyama Univ.
FUJITA T Faculty of Science, Hiroshima Univ.
SUZUKI T Faculty of Science, Hiroshima Univ. Univ.
EKINO T Fac. Integr. Arts & Sci., Hiroshima Univ.
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研究概要 |
セリウム(Ce)やウラン(U)を含む一連の化合物において,f-電子は強い相関を保ちながら伝導電子との混成効果によって結晶中を遍歴し,低温では近藤格子型の相互作用によって重い電子状態を形成する。これらが基底状態で示す特異な物性(極めて小さな磁気モーメントをもちかつ安定な反強磁性,非BCS型超伝導およびそれらの共存問題,半導体的伝導現象など)の機構解明は,現在高温超伝導のメカニズム解明と並んで,固体物理の中で最も注目を集めている研究課題である。我々は,新しい型の基底状態をもつ重い電子系化合物を日蘭共同で探索する事と,典型物貨について純良単結晶を育成し,両国の得意とする実験装置を駆使して多面的系統的研究を行うことを企画した。以下,これまでの研究実績の概要を記述する。 (1)重い電子系化合物の探索は,4つの研究チーム(広大,東北大,アムスルダム大,ライデン大)が密接な連絡を取りながら,それぞれ独立に進めてきた。広大ではウラン三元系U_aT_bX_c(T=Ni,Cu,PdPt,Au;X=Al,Ga,Sn)の物貨探索に着手し,UNi_2Ga,UPd_2Ga(いずれも六方晶ZrPt_2Al型結晶構造)およびUAu_2Al(斜方晶YPd_2Si型構造)は共に弱い反強磁性を伴った重い電子系化合物(電子比熱係数r〜100〜300mJ/K^2・mole)であること,又UCu_2Sn(ZrPtAl型)はネール点T_N=16.6K以下で電気抵抗Pの異常上昇を伴った重い電子系(r〜60mJ/K^2・mole)であることを見出した。更にUCu_<3+X>Ga_<2-X>(CaCu_5型六方晶構造)が重い電子系反強磁性体であり,ネール点T_NがX=0,3で最大(T_N=18K)をとることを見出した。このとき,r=130mJ/K^2・moleである。反強磁性が消失するX=0.6で,rは最大値(b-430mJ/mole・K^2)に達した。これらの結果より,U系化合物においても近藤効果とRKKY-型交換相互作用の競合が存在していることを明らかにした。東北大では,UPtSi_2(CeNiSi_2-型構造)とU_2PtSi_3(六方晶AlB_2-型構造)の新しい化合物を見出した。UPt5i_2はキュリー点Tc=86K,磁気モーナント2.6μв1Цをもつ強磁性体で,Ц_2PtSi_3はγ=200mJ/mole・
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K^2をもつ弱い強磁性ヘビーフェルミオン化合物であることを明らかにした。オランダのライデン大では,非磁性で重い電子系化合物Ц_3Ni_3Sn_4(立方晶Y_3Au_3Sb_4-型構造)と同じ結晶構造を有する非磁性半導体Ц_3Ni_3Sb_4の混晶系において,中間組成でキャリアー数が減少しているにもかかわらず重い電子状態が安定化することを明らかにした。更に,CePd_2Al_3のCePt_2Al_3(CaCu_5型六方晶構造)新しい異常に重い電子系化合物と発見し,現在それらの諸物性を明らかにしてきている。 (2)典型物貨の純良単結晶の物性研究としては,半導体近藤格子化合物CeNiSn,反強磁性と超伝導が共存した重い電子系化合物ЦPd_2Al_3およびナタ磁性転移を伴った非磁性ヘビー・フェルミオンCeRu_2Si_2を取り上げた。CeNiSn(ε-TiNiSi型斜方晶構造)は高温で不純物近藤状態にあり,低温で重い電子状態(質量増強された準粒子)のフェルミ準位にV字型のギャップが形成され,金属から半導体へ転移する。アムステルダム大学のMenovsky教授の下で,高畠(広大)がCeNiSnの純良単結晶を育成し,Franse教授,De Visser博士とともに熱膨脹と磁歪を0.05Kから15Kまでの温度範囲で測定した。その結果,斜方晶のb軸方向の熱膨脹係数α_bが,ギャップが開く6K以下で異常を示すことを明らかにした。現在,CENG(グルノーブル)のRegnault博士とともに,CeNiSnの単結晶の中性子非弾性散乱の実験を続けており,C軸に沿って約30Kのスピン・ギャップを観測した。佐藤(東北大)はアムステルダル大のMenovsk′y教授の指導の下に,CeRu_2Si_2単結晶を育成し,メタ磁性前後のdHvA効果によるフェルミ面の観察の実験を行っている。更にЦPd_2Al_3の単結晶育成に成攻し,電気伝導度,磁化,帯磁率の異方性の測定を行い,ЦRu_2Si_2と同様極めて異常な振まいを示すことを明らかにした。更に広大グループはチェコのSechovsky教授との協力研究を推進し,ЦNiGa単結晶の物性測定より巨大磁気抵抗を示すことを発見した。その起源は定かではないが,多層薄膜で観測されてきた現象と酷似しており,強相関電子系層状化合物特有の現象と考えている。 (3)本研究の総括会議を平成4年9月に開催し研究成果について討論した。両国間では今後とも協力関係を維持し,研究を継続させていく点で意見の一致をえた。これからの進展が期待される。 隠す
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