研究分担者 |
永宮 正治 コロンビア大学, ネヴィス研究所, 教授
HANS Boggild コペンハーゲン大学, ニールス・ボーア研究所, 教授
WILLIAM J.Wi ヨーロッパ合同原子核研究所, 主任研究員
岩田 洋世 広島大学, 理学部, 助手 (20168579)
阪口 篤志 広島大学, 理学部, 助手 (70205730)
杉立 徹 広島大学, 理学部, 助手 (80144806)
宮村 修 広島大学, 理学部, 助教授 (80029511)
米沢 穣 広島大学, 理学部, 教授 (70033800)
NAGAMIYA S. Nevis Laboratory, Columbia University Professor
BOGGILD H. Niels Bohr Institute Professor
WILLIS W.J. Department of Physics, Columbia University Professor
|
研究概要 |
本研究は,物質の全く新しい存在様式であるクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)の存否を明らかにするための基礎資料である高エネルギー重イオン衝突におけるハドロンの一粒子スペクトルおよび二粒子相関関数を精密に測定することを目的としている。とくに,二粒子相関関数をハドロンの種別に明らかにして,それらハドロンの発生源の大きさを決定することが中心的課題である。このためにわれわれは国際共同研究グループNA44を組織し,CERN-SPS加速器を用いて研究を進めている。 本年度においては,平成4年3月に,本学で開催したNA44のグループ全体会議での討論結果に従い,つぎの3項目を中心とする研究を進めた。 1)核子あたり200GeVの硫黄ビームによる原子核・原子核衝突の生データを収集する。 2)これを本学に持ち帰ってデータ解析を行い,これを他のグループの結果をつき合わせて,NA44全体の公式結果として公表する。3)2年後にSPSで加速が予定される鉛ビームのための実験準備を進める。 2)これを本学に持ち帰ってデータ解析を行い,これを他のグループの結果をつき合わせて,NA44全体の公式結果として公表する。 3)2年後にSPSで加速が予定される鉛ビームのための実験準備を進める。 1)については,約2カ月半の硫黄ビームによる実験において,標的核として硫黄,銀,鉛を用い,それぞれ約100万,100万および7,500万個の事象数の生データ収集を行った。 2)この生データをCERNにおいて磁気媒体に複写の上,本学に送り,データ解析を行った。その結果を,平成4年夏および冬にそれぞれCERNおよびコロンビア大学において開催されたグループ全体会議に報告し,他グループの結果と照合し,詳細な検討を行った。その結果の一部をまとめて論文とし,フィジックス・レター誌に投稿した。これは出版が受理されており近日中に公表されることとなっている。 3)鉛ビームのための準備については,まず鉛核,原子核衝突のシミュレーション・コードの開発にあたった。終状熊に放出される粒子数の増大に対応するための新しい粒子検出系についても検討を行った。このうち当グループとしては粒子同定用装置の改良を担当して検討を行っている。 以上の研究計画を実施した結果得られた成果を以下にまとめる。1.核子あたり200GeVの硫黄ビームを検出するためのガス・チェレンコフ・カウンタの開発に成功した。このビーム・カウンタは実用ビーム強度に対しても36ピコ秒という世界最高級の時間分解能をもち,本番実験に使用され威力を発揮した。なお,この成果は論文にまとめ,ニュークリア・インスツルメンツ誌に投稿した。 2.発生ハドロン(π^±,K^±,p,p^^-)の1粒子スペクトルは,横方向質量についての指数関数でよく記述でき,これより,陽子・原子核衝突および原子核・原子核衝突の種別およびハドロン種別に,ハドロン発生源の温度パラメタが決定できた。また,他の実験で以前に報告されて問題となった,横運動量の小さい領域でのパイオンの異常発生は存在しないことが明らかになった。 3.π^±およびK^±の各々について2粒子相関関数を求めた。このうちπ^+についてこれまでよりずっと詳しい解析を行い,陽子・鉛衝突では発生源の大きさが2fm程度であるのに対し,硫黄・鉛衝突では5fmとなることを見出した。 4.K^±に対しては,まだ解析が完全には済んでいないが,これまでわかったところによると,K^±発生源の大きさは,π^±のそれよりずっと小さく,約半分くらいであり,これはK^±の方が早く放出されることを示している。 5.K^+とK^-の比較では,両者に殆んど差のないことがわかった。 6.鉛ビーム用のシミュレーション・コード開発に着手し,現在ようやく核子・デルタおよびパイオンの自由度をとり入れたものまでできている。更なる開発が必要である。 7.鉛ビーム実験用の新して粒子識別装置として,ガス・チェレンコフ・カウンタを採用し,その概念設計を終え,現在詳細設計にとりかかっている。
|