心筋細胞内カルシウム濃度調節機転

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03044114
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 野間 昭典 九州大学, 医学部, 教授 (00132738)
• 研究分担者: KOZLOWSKI Ro オックスフォード大学, 生理学研究所, 助手 ; POWELL Trevo オックスフォード大学, 生理学研究所, 教授 ; 光家 保 九州大学, 医学部, 講師 (40174065)
• キーワード: Na / Ca交換機転 / 心筋細胞 / 細胞内Ca濃度 / Caged Ca / 細胞膜電流 / イオン輸送

研究概要

オックスフォ-ド大学Powell教授との共同研究で、単離した心筋細胞の細胞内Ca濃度の測定を行い、Na/Ca交換機転に基づく膜電流を同時記録した。その結果、膜電位変化によってNa/Ca交換機転によるCa輸送が変化し、これによって細胞内のCa濃度が、ダイナミックに変化していることを示し、この成果をJournal of Physiologyに発表した。同時に、Ca感受性蛍光色素を使ったCa濃度測定に対する方法の検定についても報告した。この実験で使用した光学系を応用して、紫外線照射によってCaを放出するいわゆるCaged Caを使う実験を本年度の主な課題とした。この方法では細胞内にCaを結合したNitroー5を細胞内潅流法によって与え、十分飽和した状態で0.5msの紫外線パルスによって瞬時に細胞内のCa濃度をあげることができる。我々独自の方法によって、これによって活性化されるNa/Ca交換機転の電流を記録した。このNa/Ca交換電流は瞬時にある値をとるのでなく、時間と共に指数関数的に増加することを発見した。しかも、その速度は温度を37度から25度に下げると明らかに遅くなるのが観察された。これは細胞内のCa濃度の上昇に引き続いて、Na/Ca交換機転に関わる担体蛋白分子の状態変化を反映していると考えられる。この仮説が証明されれば、変化速度からNa/Ca交換機転の回転速度が決定され、続いて担体分子の分布密度が計算できる。なおこの研究は、大学院生塩谷孝夫の協力を得て、現在引き続いていろいろな側面からの実験を繰り返している。

研究成果

• [文献書誌] Akinori Noma: "The ATP-sensitive K^+ channel." Japanese Journal of Physiology. 41. 177-187 (1991)
• [文献書誌] Dayi Qin: "Limitations due to unstirred layers in measuring channel response of excised membrane patch using rapid solution exchange methods." Japanese Journal of Physiology. 41. 333-339 (1991)
• [文献書誌] Zhuren Wang: "Conductance properties of the Na^+-activated K^+ channel in guinea-pig ventricular cells." Journal of Physiology. 433. 241-257 (1991)
• [文献書誌] F.M.Tareen: "β-adrenergic and muscarinic regulation of the chloride current in guinea-pig ventricular cells." Journal of Physiology. 440. 225-241 (1991)
• [文献書誌] Akinori Noma: "Cytosolic free Ca^<2+> during operation of sodium-calcium exchange in guinea-pig heart cells." Journal of Physiology. 442. 257-276 (1991)
• [文献書誌] A.M.Frace: "Control of the hyperpolarization-activated cation current by external anions in rabbit sino-atrial node cells." Journal of Physiology.
• [文献書誌] Kyoichi Ono: "Synergistic action of cyclic GMP on catecholamine-induced chloride current in guinea-pig ventricular cells." Journal of Physiology.
• [文献書誌] Tamotsu Mitsuiye: "Exponential activation of the cardiac Na^+ current in single guinea-pig ventricular cells." Journal of Physiology.
• [文献書誌] 野間 昭典: "代謝VOL.28臨時増刊号 シグナル伝達路とそのクロスト-ク" 中山書店, 381-383 (1991)