研究課題
イスラエル、ヘブライ大学のヨッフェ教授より3884株の有毒フザリウム菌が送付された。しかし送付途上で破損し、修復不能な46菌株は減菌処分し、残りの3838株を受け入れたことをイスラエルに報告した。受け入れた菌株は新たに調製した培地にすべて植菌し直し、菌株送付過程に生じたかもしれない雑菌汚染の有無および菌株を送付リストと照合した。菌の生育確認後、菌株番号に応じて少グル-プ毎に整理した。整理後、200菌株を菌の状態および重要性から選び、農林水産省生物資源研究所で永久保存菌株として登録した。その他の菌株については研究過程で重要性が認められた株を永久保存リストに加えてゆく予定である。今年度は3838株中、1941年から47年にかけてソ連で発生したフザリウム菌による食中毒症(ATA症)の原因化合物と考えられるTー2トキシンの生産菌であるフザリウム・スポロトリキオイデスおよびフザリウム・ポアエの2菌種200株を選んでマイコトキシン生産性を分析した。対象としたマイコトキシンはTー2トキシン、ニバレノ-ルおよびデオキシニバレノ-ル等のトリコテセン系マイコトキシン類7種とエストロジェン作用を有するマイコトキシン、ゼアラレノンで、その生産性をガスクロマトグラフ分析および質量分析等で調べた。その結果、供試した2菌種の菌株にはゼアラレノンの生産能は認められなかったが、すべての菌株にTー2トキシン、ネオソラニオ-ルおよびジアセトキシスシルペノ-ルの生産性を認めた。このうち最も毒性の強いTー2トキシンを200μg/ml以上産生する高生産株が全体の65%を占めており、ATA症発生後44年以上経たことを考えると、分離当初の生産性は現在の数倍から十数倍高かったのではないかと考えられ、ATA症の原因物質となったと推測された。