研究課題/領域番号 |
03044137
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
梅津 光生 早稲田大学, 理工学部, 教授 (90132927)
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研究分担者 |
アレン・ヌージェント ジドニー, セントビンセント病院・人工心臓部, 研究員
タカオ・ナカムラ シドニー, セントビンセント病院・人工心臓部, 部長
関 淳二 国立循環器病センター研究所, 生体工学部, 研究員 (20163082)
NUGENT Allen Senior Scientific Officer, Cardiac prostheses Research Lab. St. Vincent's Hospit
NAKAMURA Takao Director of engineering, Cardiac prostheses Research Lab. St. Vincent's Hospital
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研究期間 (年度) |
1991 – 1992
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キーワード | 補助心臓 / 旋回渦流型人工心臓 / 循環シミュレータ / 血漿遊離ヘモグロビン / 動物実験 / 水撃現象 |
研究概要 |
8 研究実績の概要(当該年度のまとめ) (1,600字〜1,800字)オーストラリア人工心臓研究プロジェクトは.本研究費を得て研究を行う以前に.日本.中国.オーストラリアの3国の研究者がシドニーセントビンセント病院にて推進していた。そこで開発された補助人工心臓は.旋回渦流型人工心臓と呼ばれ.流体力学をベースに設計され.従来の人工心臓よりもポンプ内を流れる血流が.連続一様でポンプの隅々まで洗い流すように流れるという特徴を有する。本研究では.日本側では主として.人工心臓研究システムを工学的に評価してさらに優秀なポンプ設計を得るための基礎データを得ること.一方.オーストラリア側ではヒツジによる動物実験及び.そこから得られるデータと日本のデータをもとに実用化に向けたシステムの開発を行うことを主眼として.研究を進めた。以下.国別に成果の概要を記す。 1)日本における成果:ポンプの流体力学的特性を評価し得る循環シミュレーション装置のセットアップを早大と国立循環器病センター研究所が協力して行った。本研究ではこの人工心臓(血液ポンプ)の基本的設計概念を保ちつつより優秀なポンプ設計への検討を目標とする。より優秀なポンプとは.同一駆動条件の下で.(1)流量が大きい.(2)弁の急閉鎖に伴う水撃を軽減する.(3)流れの乱れによる溶血を緩和する.(4)流れの停滞(淀み)による血栓形成を阻止する.ものである。これらの指標について以下の通りポンプの要素別に検討した。ポンプハウジングについては旋回渦流形状を保ちながらDome型.cone型.Bell-bottom型の3種類のモデル作成することから開始した。実験結果は以下の通りである。ポンプ内容積の大きいDome型で水撃が最小で.最大であるBell-Bottom型と比して21[%]減であった。またDOME型については収縮期に連続的な流れを保ちながら比較的流速が大きくない形状と判定され.血液へのせん断力が小さくなると予想された。一方.Cone型は拡張期におけるダイアフラム(ポンプ駆動部の膜)とハウジングの接合部分(D-H Junction)での洗い出しが優れている.ということがわかった。次にダイアフラムについては従来からあるDome型以外に.Cone型のものも作成して実験を行った。その結果.流量は膜自体の容積に依り.容積が14[%]小さい円錐形状のものが11[%]小さかった一方.水撃は13[%]軽減された。また.膜厚が0.45[mm]程度が水撃が最小となり20[%]程度軽減された。さらに流入口形状についてはRが大きいと旋回流が発達せず流れの乱れが確認される.ということもわかった。ただし.ポンプ内部の流れは既存のレーザドップラー流量計による計測では未だ十分に解析を行うことができていない。現在までに特殊アッタッチメントを製作して計測を始めてはみたが.満足すベき結果は得ていない。この計測法の信頼性を高めつつ.今後はこれらの長所を組み合わせてポンプを設計することが重要であると考えている。 2)オーストラリアにおける成果:ヒツジによる慢性動物実験を2種類のダイアフラム(塩化ビニルとポリウレタン)について行った。その結果.1週間駆動後のヒツジの血漿遊離ヘモグロビン値はいずれのダイアフラムを用いても10mg/dL以下と良好な結果が得られた。しかし.ポリウレタン製ダイアフラムの方がさらに低値となり.循環モデルによる試験で.ポリウレタン製の方が流入部の水撃現象が低く抑えられていた.という結果を証明するデータが得られた。この旋回渦流型人工心臓の特性評価を現在引き続いて行っているが.オーストラリアでのヒツジの慢性実験の結果.血液の損傷を極めて低いレベルに保つことができることが判明した一方で .血液接触面のコーティング処理が動物の長期生存を握る鍵であることが明確となり.旋回渦流型ポンプの最適設計の検討に加え.加工法の検討を日本とオーストラリアで協力して行うことの重要性を示された。
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