研究課題
国際学術研究
本研究計画の目的は淡水ヒドラの細胞接着分子を分離、同定し、形態形成における機能を明らかにすることにある。研究代表者は日本産チクビヒドラ(Hydra magnipapillata)の突然変異系統を分離し、ヒドラ発生機構の研究を行ってきた。従来の研究の中心は、一様に見える組織のどの部域に将来どの構造が形成されるかが決定されるプレパタ-ン形成過程の解明にあった。本計画は、プレパタ-ン形成段階の決定に従って実際に進行する形態形成過程に焦点を移して研究を行った。形態形成における細胞接着分子の重要性が脊椎動物において明らかにされている。そこで、頭部再生あるいは出芽等のヒドラ形態形成過程に関与する細胞接着分子を分離、同定し、更に接着分子の動的変化を通じてプレパタ-ン形成段階とパタ-ン形成段階の関連性を検討することが必要である。そして更に、分子レベルの研究や進化学的研究に発展させて広い視野に立った接着分子の解明へと発展させる事が必要である。上記の目的のため、ヒドラ細胞再集合系を用い、ヒドラの細胞接着分子に対するモノクロ-ナル抗体のスクリ-ニングを行った。ヒドラ組織を一度はらばらの単離細胞に解離し、その後人為的に再集合させ、個体の再生させることができる。この再集合過程には細胞接着分子が重要な働きをする。そこで細胞接着分子と結合して再集合過程を阻害するモノクロ-ナル抗体のスクリ-ニングを行った。抗体のスクリ-ニングには、ヒドラ細胞を抗原として作成されたモノクロ-ナル抗体ライブラリ-が必要である。そこで大規模な抗ヒドラモノクロ-ナル抗体ライブラリ-を維持しているカリホルニア大学ア-バイン校発生生物学センタ-H.Bode教授の研究室と、ミュンヘン大学動物学研究所C.N.David教授の研究室において、共同研究としてスクリ-ニングを行った。その結果、外胚葉上皮細胞、内胚葉上皮細胞、あるいは間幹細胞の細胞表層に存在する抗原を特異的に識別する抗体を多数得る事が出来た。目下これらの抗原を単離同定し、その機能を明らかにする研究を進めている。また脊椎動物の細胞接着分子遺伝子と相同のヒドラ遺伝子の分離も行った。脊椎動物接着分子カドヘリンc端付近のアミノ酸保存配列に対して作成されたオリゴヌクレオタイドをプライマ-とし、ヒドラcDNAをテンプレ-トして増複されるクロ-ンを分離した。分離クロ-ンは約150bpの大きさを持ち、カドヘリン遺伝子と高い相同性を示す。目下このクロ-ンをプロ-ブとしてヒドラcDNAライブラリ-からcDNAクロ-ンの分離を進めている。
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