研究課題/領域番号 |
03045013
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
富田 彰 東北大学, 反応化学研究所, 教授 (80006311)
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研究分担者 |
TAO T. Pennsylvania State University, Research A
RADOVIC L.R. Pennsylvania State University, Associate
京谷 隆 東北大学, 反応化学研究所, 助教授 (90153238)
TAO Tinghong Pennsylvania State University
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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キーワード | 炭素 / ゼオライト / 金属触媒 / 触媒ガス化反応 / 表面含酸素化合物 / 炭素堆積 / 触媒再生 |
研究概要 |
本年度も両大学双方から研究者を派遣し、これまでの研究を継続するとともに残った実験項目を完成させ、本研究で得られた成果を実用に結び付けるための道筋を明らかにすることを試みた。まず、本年度にペンシルベニア州立大学側から東北大学に派遣されるT.Tao助手には、種々の炭化水素転換触媒として有用な金属担持ゼオライト触媒上に析出した炭素をガス化により除去する研究を行ってもらうことを決定した。 予定通りに6月に京谷が米国バッファロ-で開かれる第21回Carbon Conferenceに出席し、関連研究の動向の調査を行った後、研究分担者である米国ペンシルベニア州立大学のL.R.Radovic助教授を訪問した。そこで、今まで得られた成果を討論し、必要な実験項目を明らかにした。とくに、Taoを交えて、東北大での実験計画の綿密な打ち合わせを行った。その結果、以下の計画で実験を行うことが決まった。 (1)炭素が堆積したゼオライト金属触媒試料はペンシルベニア州立大学側でT.Taoが調製する。 (2)試料調製が済み次第、それを東北大に空輸する。 (3)東北大側では、まず、試料のEXAFS測定を行う。 (4)Taoの東北大学での主な実験項目は、X線光電子分光装置、昇温脱離装置を用いたゼオライト中での炭素と金属との存在状態、金属触媒の形態の分析とする。 予定通り、Taoは9月から3カ月間東北大学に滞在し、X線光電子分光装置、昇温脱離装置を用いて炭素存在下での金属触媒の形態について研究を行った。この研究で以下のことが明らかとなった。 (1)金属はゼオライト中に炭素と共存しており、金属のゼオライト中での分布状態は炭素の堆積量によらない。ゼオライト表面に炭素は偏析しており、金属の種類により偏析の度合いは微妙に異なる。 (2)炭素を含むゼオライト金属触媒試料を部分ガス化すると、ゼオライト中の炭素は外表面からガス化されていくのではなく、外部、内部とも均一にガス化される。 (3)昇温脱離装置による分析により、本試料中からCO_2、COなどの無機ガスが脱離することが分かった。これらのガスは主にゼオライト中の炭素表面の含酸素化合物が分解したものである。ゼオライト中に触媒として金属を担持したゼオライトの方が、プロトンタイプのゼオライトより、ゼオライト細孔中の炭素表面の含酸素化合物の量は多い。 (4)金属の種類によっても表面含酸素化合物の量は異なるが、炭素のガス反応性とは相関をもたない(一般に炭素の触媒ガス化においては、表面含酸素化合物の量とガス化反応性とは良い相関を示すことが知られている)。 また、Taoは11月末に3日間大阪府立大学に滞在し、当該大学に転出した共同研究者の山下とEXAFS測定結果の解析を行った。その結果、つぎのような知見が得られた。 (1)ゼオライト細孔中の金属は高分散している。 (2)金属の高分散状態は金属の種類、炭素の堆積の有無、その量に影響されない。 (3)炭素が堆積したゼオライト金属触媒試料を高温で空気酸化しても、ゼオライト細孔中の金属は高分散状態を保つ。 このほか、前年度より協力して研究を続けている「炭素とNOxの反応機構」、「炭素ガス化のコンピューターシミュレーション」、「カルシウム触媒による炭素ガス化の際の水素被毒作用」について議論を続け、成果のいくつかを論文として投稿した。 最終年度であるので、3年間で得られた成果を評価するとともに、炭素-金属-ガス3者の相互作用に関する学問の上で得られた成果を総括し、約90ページの成果報告書を発刊した。
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