研究課題
新規モノマ-の合成及び接着剤の試作を行った。すなわち、歯質組織内に浸透し重合するモノマ-として、一分子中に親水性基と疎水性基を有するメタクリル酸エステルを合成した。これまでに合成した4ーMETA、HPPM及びPhenylーPなどの接着機能性モノマ-及び新規モノマ-を用いた歯科用接着剤を試作した。新規モノマ-を含む歯科用接着剤硬化物の物理強度、吸水率など基本物性を測定し、新規モノマ-の添加効果を検討した。また、歯科用補綴物である金属、セラミックに対する接着性を評価した。接着メカニズムの解析として牛歯を用いた接着試験で重合と接着の関係を明かにすると共に、モノマ-が歯質内に浸透して重合する接着機構をSEM、TEMによる観察から解明した。更に歯質内に含浸した樹脂の分析をXPS及びXMAを用いて行い、接着機能性モノマ-の効果を調べた。本年度には、日本側では接着の長期的安定性を走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡を駆使して、象牙質の接着界面付近における接着剤成分と象牙質成分のまざり具合を調査した。この結果と平成2年度までに中林らが行ってきた研究結果をつき合わせてみたところ、接着耐久性の良い接着試料(in vitroの実験)と口くう内でヒト生活歯へ接着した試料とが透過電子顕微鏡で観察する限りにおいて、同一であることを明かにすることができた。この事実は歯科治療に接着剤を利用した予後の予測法として利用可能であり、今後の発展が十分期待できる。中国北京医科大学では象牙質研削面をFTーIRで表面分析し、これと接着強さの関係を検討した。また、本年度は徐恒昌教授が来日して、東京医科歯科大学医用器材研究所で象牙質の走査型電子顕微鏡観察法、透過型電子顕微鏡観察法を習得した。
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